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【相談対応Q&A】修学旅行へ行きたくない

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第187回のテーマは「修学旅行へ行きたくない」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第187回のテーマは「修学旅行へ行きたくない」。

学校のあり方を考えていく時期にある

 現在の学校は、学校に対する多様な意見への関わり方を考える必要があると私は感じています。学校にいる人、たとえば「教員」は、一般的に学校に対して肯定的な考えを持っています。自分自身が子供のころに学校や教員に対してそれなりに良い思いがあったからこそ、学校で働こうとなったケースが多いはずです。

 しかし、世の中は、学校に対して好意的、肯定的に思っていない人もそれなりにいます。自分自身が学校で嫌な思いをした人もいるでしょう。そういった人もいるのだということを踏まえて、教員は学校の外の人たちと関わっていく必要があるでしょう。

 新型コロナウイルスの流行は、学校のあり方を考える良い機会となりました。今回のテーマである「修学旅行を含めた学校行事」のあり方はもちろん、学校に関する多くのことについて考える必要に迫られました。近年、マスコミで話題となっている「教師の働き方」もこういった話と繋がってくるものです。教採倍率の低下、新卒採用者の離職率の上昇なども含め、今一度「学校のあり方」を考えていく時期にあるのではないかと私は感じています。

 現在、そしてこれからの学校のあり方について考えていく際「子供のため」という言葉については慎重に扱っていく必要があると私は思っています。学校や園で取り組まれることは、失敗したことも含めて、どんなことであっても「子供のため」になることです。子供の年齢が小さいほど、彼らは可能性に満ちています。先ほど書いたようにどんなことでも「子供のため」になります。ただそういった考えのもとに取り組んできたものの結果が、現在の学校の状況です。取り組むことが次々と増えました。学校のことを「破裂しそうなほど空気の入った風船のようだ」と表現した人もいます。

今の学校で本当に必要なものは何なのか

 明治以降、日本の学校は3回の大きな変化がありました。1回目は、明治5年の学制です。近代学校システムができあがりました。2回目は、昭和20年の終戦時です。それまでの戦時期の教育をリセットし、アメリカをモデルとした民主的な教育システムができあがりました。そして、3回目が今です。新型コロナウイルスの流行、それと関連のあるGIGAスクール構想などにより、学びの形が大きく変わりつつあります

 果たして、今の時代に修学旅行のような旅を学校が主催して行う必要があるのでしょうか。この問いに対する答えはそれぞれの人によって違ってくるでしょう。各家庭による経験には違いがあります。そういった違いを学校教育活動によって補っていくことが学校の目的の1つであり、修学旅行にもそういった意味があるという考え方があります。ただ、そういった「子供のため」「可能性を広げるため」という言葉によって、学校は収拾がつかないほど多忙で、落ち着きのない、混乱した状況となっている事実があります。先にも書いたように教職を志望する若者が減っていることは、学校のあり方を考えていく必要があることを明確に示しています。教員間、そして、子供や保護者も交えて議論し、どういった形で取り組んでいくのかを決めていくと良いのだと思います。修学旅行などだけでなく、学校で取り組むさまざまなことについて話し合った結果、その取組みが必要であるとなれば、取り組んでいけば良いでしょう。これまで取り組んできたものを無条件でまた取り組んでいくのではなく、今の学校の状況において本当に必要なものは何なのかを皆で考えていきたいです。そういった取組みに私は希望を感じます。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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