学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第167回のテーマは「先生がルールを守らない」。
教員は市民から厳しい目で見られる
教員はもちろん「聖人君主」ではありません。時にルールを守れない(守らない)こともあると思います。ただ、教員は、子供たちに基本的なルールを守ることを伝える役割を担っています。そういった立場であることを考えると子供や親から「あの先生はルールを守っていない」と言われる(思われる)ような状況では駄目なのだと私は思います。
先日、公立学校の校長がコンビニエンスストアのコーヒーのサイズで不正をした(Mの代金を支払ったのに、Lのボタンを押して、多く入れた)ことにより「懲戒免職」となったというニュースがありました。1回の差額は70円で、合計で7回していたとのことです。490円の不正で「懲戒免職(退職金は無し)」です。このところ、政治家の不適切なお金の扱いに関するニュースをよく見聞きします。数百万円、数千万円もの多額のお金を不適切に扱っていたのに、その後のようすを見ると、何だか有耶無耶になっています。490円と数百万円、数千万円の金額の問題ではないですが、現状を見ると、何とも言えず、複雑な心境になります。
選挙で選ばれた政治家も公立学校の教員もどちらも税金から給与などが支払われています。そういったこともあり、どちらも市民から厳しい目で見られる傾向にあります。私の感覚では、より教員の方が厳しい目で見られているように感じます。
教員は子供にルールを伝える立場にある
ところで、教員とルール遵守の関係についてですが、その時その時の状況によって変わってくるのだと私は思っています。先ほども書いたように教員は子供に基本的なルールを伝える立場にあります。「交差点では信号を確認し、守るように!」と言っている教員が、学区内にある交差点で信号無視をしているようでは、その指導(発言)に説得力がなくなります。「廊下を走らない」「時間を守る」なども同様でしょう。
私は小学校の教員をしている折、授業の終了の時刻は必ず守るようにしていました。何らかの事情でその時間の学習内容が終えられていない場合でも時間になったら授業はやめるようにしていました。それは、私が普段から子供たちに伝えている「時間を守るように」という言葉を自分も守りたかったからです。大事な内容だからと言って、授業時間が終了し、休み時間に入っているタイミングで授業をしても、多くの子供は授業に集中できません。頭の中では「早く授業が終わらないかな」「休み時間に何をして遊ぼうかな」「先生はいつも時間を守るようにと言っているのに、自分が守らないなんて、言っていることとやっていることが違うな」などと思っているはずです。授業の質が低くなるだけでなく、教員と子供との信頼関係にマイナスの影響を与える可能性もあります。
先ほども書いたように基本的には教員はルールを守るべきだと思います。ただし、状況によってはそうではないこともあるのだと思います。緊急事態で廊下を走ってでも急ぐ必要がある時、我を忘れて周りの人に危害を加えている子供を押さえつける時などがそれにあたるでしょう。難しいところなのですが、そういった状況を判断するバランス感覚が教員には求められているのだと思います。
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