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今後の医学教育、大学病院の課題など…検討会が中間報告

 文部科学省は2023年9月29日、今後の医学教育に関する在り方検討会において、これまでに実施された議論の中間報告を公開した。大学病院が抱える問題点や、今後必要となる方策についてまとめられている。

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業務時間の構成比率および週あたり研究業務時間
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 文部科学省は2023年9月29日、今後の医学教育に関する在り方検討会において、これまでに実施された議論の中間報告を公開した。大学病院が抱える問題点や、今後必要となる方策についてまとめられている。

 文部科学省が設置する「今後の医学教育に関する在り方検討会」では、2023年5月以降、5回にわたり、日本の医学教育・研究を支える大学病院が抱えるさまざまな課題と、これらへの対応策、教育・研究の充実について広範な観点から検討を行っている。今回、それらの中間取りまとめとして、内容をWebサイトに掲載した。

 掲載された中間報告によると、大学病院は明治以来、医学部の教育・研究に必要な附属施設として設置され、あくまでも教育・研究の一環として診療が行われてきたことや、医療の最後の砦として日本の医療を支えてきたことなど、大学という医師養成機関におけるさまざまな歴史の大局を見渡すことができたという。

 しかしその一方で、現在は地域の医療資源が広く、かつ薄く分散した体制となっていることなどから、大学病院といえども諸外国に比べると人員や規模などが小さく、勤務する医師の労働は過酷な状況に置かれているという。

 また、大学病院は教育機関としての役割を担い、実習などを通じて基本的診療能力など、各専門領域において標準的で適切な診断・治療を提供できる医師の育成に重要な役割を果たしているとしているが、大学病院における臨床研修医の受入数は近年減少しており、臨床研修の場としての大学病院の魅力が低下しているとの指摘もあるという。医学部の教員を兼ねる大学病院の医師の視点からは、診療重視の病院運営のもとで診療業務が増えることにより、講義の準備やOSCEの指導・評価などをはじめ、教育に割く時間が減少するなど、教育の質の低下につながりかねない状況にあるとの指摘もあるという。

 こうした状況は臨床医学分野に限るわけではなく、諸外国と比べて日本の研究力は相対的に低下を続けているとし、研究論文数は増加を続けているものの、日本の国際的な地位は低下し続けている。こうした状況が継続する場合、大学病院は医師の研究を含めたキャリア形成を支えることが困難となり、医学教育・研究の場としての魅力が低下し、若手医師が集まらなくなることが懸念されているという。

 医学生から若手研究者まで、幅広い年代の医師にヒアリングを行ったところ、大学病院をより若手医師の集まる職場とするためには、大学院博士課程の魅力の向上などとともに、まずは過酷な勤務環境の改善が不可欠であるという。また、留学などの機会を通じて能力やスキルを研鑽することができる環境づくりや、大学病院が教育・研究・診療面において世界的にも高く評価されるなど、大学病院で勤務する医師が誇りのもてる職場としていくことが必要であるという。

 検討会での議論を通して、文部科学省は、おもに大学病院の運営や教育・研究の観点から、また厚生労働省はおもに診療の観点からなど、両省が国民の視点に基づいて医療を構築すること、また地域の医療を守るため、大学病院に対する継続的な支援を適切に行うことが必要不可欠であることが明白になったという。「今後の医学教育の在り方に関する検討会中間取りまとめ」の詳細は、文部科学省のWebサイトで確認することができる。

《木村 薫》

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