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GIGAスクール構想後の先生のICT活用能力、7割が「伸びた」【アンケート結果】

 リシードでは、教員の皆様を対象に、自身のICT活用能力についてどのように感じているのかを問うアンケートを実施した。この記事では、アンケートの集計結果と先生方の声を紹介する。

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ご自身のICT活用能力はどのくらいだと感じていますか?
  • ご自身のICT活用能力はどのくらいだと感じていますか?
  • GIGAスクール構想前と今とでご自身の活用能力はどのように変わりましたか?
  • 機器の活用に関して、ご自身の気持ちに一番当てはまるものはどれですか?
  • ICT機器を活用する授業を計画する際、どのような情報を参考にしますか?
  • ICT機器導入で児童生徒の学びに変化はありましたか?
  • 回答者が勤務する学校の種別
  • 回答者の勤務校

 GIGAスクール構想により1人1台端末が全国の小中学校に整備され始めてから3年。昨今は次の段階に移行し、「ICT機器を活用して授業を活性化させること」が課題になっていると多く聞かれるようになってきた。

 リシードでは教員の皆様を対象に、自身のICT活用能力やGIGAスクール構想後の学習の変化などについて問うアンケートを2023年8月2日から25日の期間に、インターネットで実施。225の有効回答を得た。回答者の勤務する設置者・校種は次のグラフのとおり。

先生のICT活用能力「できる」が6割、良い変化を感じる先生が多い

 アンケートではまず、先生自身のICT活用能力について尋ねた。

 その結果、「まあまあできる」38.2%がもっとも多く、「よくできる」23.1%、「あまりできない」18.7%、「普通」17.3%が続いた。「よくできる」「まあまあできる」をあわせると61.3%となり、6割以上の先生が自身のICT活用能力を「できる」と評価していることがわかった。

 次に、GIGAスクール構想前と今とを比べると自身のICT活用能力はどのように変わったかを聞いたところ、もっとも多かったのは「少し伸びた」44.4%。ついで「変わっていない」28.0%、「非常に伸びた」26.2%。良い変化(非常に伸びた・少し伸びた)を感じている先生は70.6%にのぼった。一方で、「少し落ちた」0.4%、「非常に落ちた」0.9%という回答もあった。

ICT活用に前向きな先生が半数以上

 ICT機器の活用に関して、先生自身の気持ちにいちばんよく当てはまるものを選んでもらう質問では、「積極的に情報収集していて、活用に前向き」47.6%、「あまり乗り気ではなかったが徐々に前向きになってきた」11.6%と、半数以上の先生が前向きな気持ちでICT機器を活用した授業に取り組んでいることがわかった。そのほか、「必要に迫られてしょうがなくやっている」18.2%、「やらなければと思いつつ積極的にはできていない」13.3%、「ICT機器を使いたいとも思わない」6.2%という結果だった。

授業計画は事例を参考にする先生が約5割、口コミも多い

 ICT機器を活用する授業を計画する際に参考にしている情報を聞くと、「書籍やWebサイトで紹介している事例」45.8%がもっとも多かった。ついで、「同僚などからの口コミ」27.1%、「実際に見学した研究授業」10.7%、「企業や教育委員会が主催するイベント」4.4%など。

 「その他」として、少数ではあるが「日頃の授業のようすを見て、効果的だと思う教材を自作する」など先生自身で教材を作成しているという意見もあった。

ICT機器の導入で児童生徒の学びに変化を感じている先生は7割以上

 ICT機器を導入したことで児童生徒の学びに変化があったかを尋ねたところ、「非常に大きく変化した」10.2%、「大きく変化した」33.8%、「やや変化した」32.0%と、76%の先生が子供たちの学びに変化を感じていることがわかった。

 具体的には、「意欲的に取り組む子供が増えた」「学習に積極的になった」「意見交換が活発になった」「板書の時間が削減でき、子供たちが考える時間を増やせるようになった」「表現方法の選択肢が増えた」など、良い変化を感じている先生が多かった。一方で、「手間が増えた分、学習活動に遅れが生じた」「漢字やひらがなの定着が遅くなった」「使うことに集中しすぎて、学びが深まっているかは疑問」という意見もあがっている。

先生たちが今後、知りたい情報は?

 ICT機器を活用した授業について、今後どのような情報を知りたいかを聞くと、「授業事例・活用事例を知りたい」という声が多かった。以下、回答の一部を紹介する。

授業事例・活用事例など、授業で役立つ情報を知りたい

・実践事例がとにかくたくさん欲しい。成功例だけでなく、うまく行かなかったこともたくさん知りたい。
・ChatGPTを活用した授業実践。
・へき地校とリモートでつなげる実践例。
・きちんと学力を上げる個別最適な学習の事例。
・「評価」に関する事例。
・学活や道徳など教科以外の授業実践例。
・探究型授業の実践事例。
・授業の出張実演。
・プログラミングに必要な能力を伸ばすための学習活動。
・現在使っているツールの活用方法。
・ICTの活用に消極的な職員が前向きに取り組めるような実践事例。
・教師がICT機器の基本的な操作がわからないことを前提にした活用方法の紹介。
・準備も下調べも、予習もせずにすぐ簡単に使えて、子供たちの学びが大きいもの。
・ICTを活用した授業動画。
・無料で使える便利なアプリ。
・特別支援学級の子どもたち向けの支援の手助けになるような授業のヒント。
・海外で子供たちに価値のあった事例。
・授業で使う資料のデータバンクのようなもの。

その他

・何でもいいので前向きになれるような情報。
・ICT活用におけるマイナスの情報を知りたい。
・情報交換の機会。
・ICTを活用するのではなく、従来の学習方法のほうが効果的な分野。
・ICTを導入して身に付かなくなった能力に注目して、それを補うために必要なこと。
・あまりICTに詳しくない先生に対するAIチャットのようなツールを使った相談窓口。
・ICT支援員に常駐してほしい。
・年齢や正規・非正規に関わらず研修の機会を平等に設定してほしい。
・ルールを守れない生徒への対応。
・健康への配慮。

 自由回答には、「働き方改革のために学校内で資料を作る時間が取れず、結局自宅に持ち帰って作業をしている」「ICT機器が現場に入ってきたが、時間や気持ちに余裕がなく機器を使いこなすための勉強ができない」といった声も寄せられた。

 今回のアンケートから、多くの先生がICT機器の活用に前向きに取り組んでいる実態が明らかになったが、先生たちが試行錯誤しているようすもうかがえた。児童生徒だけでなく、多くの先生たちが使いやすい環境が整備されるよう、国や自治体も一緒になった改革が期待される。

《編集部》

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