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【クレーム対応Q&A】宿題の丸付けが負担

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第145回のテーマは「宿題の丸付けが負担」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第145回のテーマは「宿題の丸付けが負担」。

そもそも宿題は必要?

 9月になりました。夏休みの最後に慌てて宿題に取り組んだ子供も少なくなかったのではと思います。宿題は子供も大変なのですが、関わる親も大変です。学校によっては、子供が取り組んだドリルなどの丸付けを親が担当するという所もあります。実際、私が勤めていた小学校では、夏休みのドリルは「家庭で丸付けをしたうえで提出」となっていました。

 「宿題」に関して、このところ、話題となることがありました。夏休みの宿題を無しにする学校が出てきたことなどです。夏休みの宿題を無くすことについては、賛否が分かれていました。無くすことに賛成の意見としては、やらされている義務的な学習は学習効果が高くないので無理やりやらせるよりは、それぞれの子供、家庭が夏休みだからできる学習・活動に取り組む方が良いのではないかなどのものです。反対の意見としては、塾などに通っている子供は良いが、家庭の教育力などが低い場合、何もしないままで時間が過ぎ、学びの格差が広がってしまうのではないかなどのものです。

 賛否のどちらの意見ももっともだと感じますが、私は無くしていっても良いのではと考える立場です。私は小学校の担任をしている時、子供たちに「自らやっている勉強は、やらされている勉強の10倍の意味がある」ということを伝えていました。子供が必要と感じ、自らの意志で取り組もうとした勉強は学習効果が高く、子供は大きく成長していきます。しかし、逆にやらされているような勉強の場合、やっていることに効果が薄い(学習効果が無い)ことも多いです。皮肉っぽく言い換えると「時間の無駄」に近いものです。

 夏休みの宿題ではなく、通常の時期の宿題であれば、やり方によっては効果が上がることもあります。毎日の関わり中で担任が適切なケアをしやすいからです。夏休みは担任が関わることがしにくく、家庭(子供)に任せっきりになり、うまく学びにつなげられない子供が出てくる可能性が高くなってしまいます。

慣習的に取り組んできたものを見直す

 そもそも「宿題」に関して、その意味や意義などについて考えている学校、学級は少ないのではと思います。それまで取り組んでいたから特に変えることなくそのまま取り組んでいることが多いはずです。「宿題」だけではありませんが、これまで慣習的に取り組んでいたものについて改めてその必要性について考えていくと良いのではと思います。

 ところで、今回の本題の「親による丸付け」ですが、そういったものは無くしていくべきではないかと私は考えます。親による子供の宿題への関わりですが、すべての家庭でそれが可能な訳ではありません。家庭によっては親の仕事などによって十分に関わることができない場合もあります。親が丸付けをすることができなかったり、音読を聞くことができないということです。そういったことが原因で子供がズルをしてしまうなどの不適切な行動につながってしまうこともあります。

 今後、計算問題の正誤のようなものは、GIGA端末を用いた形になってくれば、親の丸付けは要らなくなってきます。教師にとっても、親にとっても、子供にとっても、状況の把握などがしやすくなります。現在は、自治体によってはまだGIGA端末の持ち帰りができていない所もあります。文科省はGIGA端末の持ち帰りを推奨しています。今後の方向性として、ほとんどの自治体で持ち帰りを実施するという形になってくると思われます。そうなると、計算ドリルなどもオンラインでの取組みとなってきます。今後、宿題のあり方、やり方なども変わってくることが予想されます。宿題に関して、子供にとって、親にとって、そして教師(学校)にとって良い形とはどういったものなのか、それは持続可能なのかということを考えていくと良いでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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