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【相談対応Q&A】運動会で熱中症が心配

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第130回のテーマは「長時間の運動会で熱中症が心配」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第130回のテーマは「長時間の運動会で熱中症が心配」。

身体が暑さに慣れていない5月も熱中症の危険あり

 5月の連休明けは、学校によっては春の運動会に向けての練習が始まります。9月末から10月初旬にかけての時期にも運動会シーズンがあります。ただ、秋には他の学校行事などが計画されている場合もあり、運動会を春に実施する学校も多いです。5月にしても、9月にしても、運動会に関連して配慮すべきことが「熱中症」です。

 5月11日には熊本市の中学校で体育祭の練習中に熱中症と見られる症状によって、合計で7人が救急搬送されたという記事がありました。その日の熊本市の最高気温は28.2度だったそうです。「熱中症」は、真夏の本当に暑い時期(40度近い気温)だけが危険な訳ではありません。身体が暑さに慣れていない5月も真夏同様に危険な時期だとされています。5月は真夏のように40度などにはならず、上がっても30度を少し越える程度です。30度であっても、身体が暑さに慣れていない場合は、危険な場合もあります。

 「暑熱順化」という考え方があります。身体が暑さに慣れていくことを意味しています。少しずつ暑さに身体を慣れさせていくことで熱中症になりにくい身体になります。こういったことを学校関係者は理解しておく必要があるでしょう。

運動会当日だけでなく、練習日にも注意が必要

 運動会における熱中症については、運動会の「当日」も注意が必要なのですが、それ以上に気を付けたいことが「練習」です。練習では、教員の人手も運動会当日と比べると少ないことが多いです。子供のようすに気づきにくい状況となります。また、本番に向けて仕上げなければならないことも多く、少し無理をしてしまうこともあります。特に運動会に向けての練習をスタートさせる時期は、身体が暑さに慣れていないこともあり、負荷がかかります。そういったことを考えると、運動会の練習開始時は、なるべく負荷を軽くし、身体が暑さに慣れるような配慮をしていくことが必要でしょう。

 熱中症に関しては、湿球黒球温度(WBGT)、湿球温度、乾球温度などの基準があります。教師の経験などにより実施の判断を決めるのではなく、客観的な数値の基準を用いて、実施不可の判断することが求められます。先ほどから伝えているように身体が暑さに慣れていない時期は基準を少し厳しく適用していくことも必要でしょう。

同じような事故が日本中で繰り返し起こっている

 5月7日にNHKで「いのちを守る学校に 調査報告“学校事故”」という番組が放映されました。その中では、学校の部活中に熱中症になり、大きく障害が残った事例が扱われていました。その番組の中では「コピペ事故」という表現が使われていました。日本中で起こった事故を検証してみると、まるで「コピペ」をしたように、ほとんど同じような事故が日本中で繰り返し起こっているのだそうです。学校における怪我などを含む事故は日本スポーツ振興センターがデータの集計をしています。そういったものは公表されており、文科省などから対応策も共有されています。そういったものをしっかりと把握し、それぞれの学校の状況に応じた取組みをしていくことが求められるでしょう。不幸な事故が無くなっていくことを心から願います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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