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デジタル世界のリスクと効果を研究…OECD幼児教育・保育白書第7部

 文部科学省は2023年4月21日、経済協力開発機構(OECD)から「デジタル世界における幼児教育・保育」調査研究プロジェクトの成果を取りまとめた資料「OECD 幼児教育・保育白書第7部」が公表されたと発表した。

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 文部科学省は2023年4月21日、経済協力開発機構(OECD)から「デジタル世界における幼児教育・保育」調査研究プロジェクトの成果を取りまとめた資料「OECD 幼児教育・保育白書第7部(Starting Strong VII:Empowering Young Children in the Digital Age)」が公表されたと発表した。

 「デジタル世界における幼児教育・保育」調査研究プロジェクトは、幼児教育・保育施設がデジタル化に対応し、リスクを最小限に抑えながら質が高く公平な幼児教育・保育を促進する方法について明らかにすることを目的に、2021年から2023年にかけて30の国・地域で実施された世界規模の調査。幼児教育・保育関係者全体で整備すべき方策を検討し、デジタル環境における子供の保護とデジタル化の恩恵を公平に受けるために幼児教育・保育が果たす役割を追求することを目指している。

 日本は、調査研究の政策調査に対して、幼稚園、保育所、認定こども園に関する現状等について回答。カナダ、フィンランド、韓国、ノルウェー、スウェーデンと共に専門家とのウェビナー会議にも参加した他、園の事例提供等を行なった。

 報告書は、第1章から第8章までの研究報告と、ケーススタディー集等をまとめた付属資料、国・地域別の調査研究結果をまとめたカントリー・ノートから成る。

 おもな内容として、園において安全で責任のあるデジタル技術の利用を促進することに重点を置く国・地域が大多数だが、幼児がデジタルリスクから身を守り、安全で創造的な方法でデジタル技術を活用する方法を学ぶためのガイドラインや規程の整備は不十分な場合があるという。

 子供のデジタルサービスの安全な利用を確保するために、製品やサービスを電子的に遠隔で提供する「デジタル・サービス・プロバイダー」の必要性が認識されつつあるが、年齢に応じたコンテンツや活動を促進する「セーフティ・バイ・デザイン(企画・設計の段階から安全対策を盛り込むことで情報セキュリティを確保する考え方)」を求めるよりも、プライバシー規制を導入することが多く、子供のデジタルサービスの安全な利用に関して特定の責任をもつ監督機関が存在しない国が多いとの課題もあげられた。

 デジタル技術格差の解消において重要となる早期のデジタルリテラシー導入については、調査対象の半数近くが、幼児教育・保育のカリキュラムの枠組みに早期デジタルリテラシー育成の具体的な目標を掲げられていなかった。また、今後は、園の全職員がデジタル技術を効果的に活用するための基礎的な研修を受講する必要があり、責任ある立場の職員は、より高度で専門的なスキルを身に付けるための研修も受講する必要があるといった指摘をしている。

 報告書は全文英語で書かれており、OECD Libraryから全ページ閲覧可能。日本においては、報告書の内容について、5月26日に開催される東京大学大学院教育学研究科 附属発達保育実践政策学センター(Cedep)主催のシンポジウムで、OECD教育・スキル局担当責任者から説明が行われる予定。

《畑山望》

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