金融教育は、教員の意欲や学校側の積極性が高いほど、生徒の興味・関心も高い傾向にあることが2023年3月16日、日本経済新聞社グループの金融情報サービス会社QUICKが実施した調査の結果から明らかになった。意欲は教員の金融リテラシーが高まるほど向上するが、金融リテラシーは教員の担当科目や性別等によって差がみられた。
「高等学校における金融教育の意識調査2022」は、日経リサーチ社の協力のもと、全国の高校で公民・家庭科を担当する教員471名を対象にインターネットで実施した。調査期間は、2022年12月7日~12日。
2022年度から高校の家庭科の授業で、投資や資産形成まで踏み込んだ金融経済教育が必修となった。調査結果によると、金融教育について「重要だと思っている」「意欲的に取り組んでいる」という教員は、それぞれ全体の7割を超えた。その一方、金融教育の実施に対して積極的に取り組んでいる学校は4割弱にとどまった。さらに学校側が金融教育に積極的であるほど、教員は金融教育に意欲的であり、生徒の興味・関心も高いという結果がわかった。
教員の金融リテラシーは高いほど、教える際に自信のある分野が多く、金融教育に意欲的で、生徒の関心の高さにもつながっていた。また、学校側が金融教育に積極的であるほど、金融関連資格を保持する教員が多いという結果もみえてきたという。
金融リテラシーは、教員の担当する科目、性別、年齢によって差もみられた。社会科教師の金融リテラシーは高い一方、家庭科教師は低い傾向にあり、男女別では男性教員のほうがリテラシーは高い傾向にあった。また、教職歴が短いほどリテラシーが低く、金融教育意欲が低いこともわかった。
金融教育分野は「家計管理」「生涯の生活設計(ライフプラン、社会保障・保険)」「資産形成・運用」「金融トラブル」「キャリア教育・職業選択」「金融や経済、市場の仕組み」の6テーマに分類。テーマ別では、「資産形成・運用」分野に苦手意識をもつ教員が他の分野より多く、全体の33.3%にのぼった。特に家庭科教員は、38.5%が「苦手意識がある」と回答した。「資産形成・運用」を教える際の課題について、リテラシーの高い教員は「効果的な教材が少ない」という回答が33.9%と多かった。
授業形式は、6テーマすべてにおいて座学形式が多かった。一方、「家計管理」を除く5テーマでは、グループワークや外部講師の講演を望んでいる教師の割合が比較的高いことがわかった。特に「資産形成・運用」のテーマでは、「生徒同士のグループワーク(ゲーム形式)」が好ましいという声が33.3%と、他のテーマと比べて多かった。また、「資産形成・運用」のテーマについて、金融リテラシーの高い教員の5割は「公民」、3割は「総合的な探究の時間」で扱うべきと回答した。
教員のうち金融教育に「意欲をもっている」層は、授業を進めるにあたり「教材の準備や作成が大変」「効果的な教材が少ない」「授業時間の確保が難しい」という3点を課題に感じていた。また、意欲をもっている層、リテラシーの高い層の各6割は、公的機関に対して「ゲーム感覚で学べる副教材の作成・提供」を望んでいることもわかったという。