学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第114回のテーマは「授業のペースが早いので配慮してほしい」。
多くの学校で新学期が始まっていることと思います。長期休業明けはさまざまな課題が表面に出てくる時期です。前回のテーマであった「登校しぶり」もそれに当たります。多くの皆さんが穏やかに再スタートが切れていることを願います。
学年末は授業のペースが早まる傾向にある
今回のテーマは「授業のペースが早い」というものです。これは学年末に向けて話題になることが多いものです。どの学校、どの学年であっても、その学年で取り組む内容は決まっています。学習指導要領で法的に定められ、教科書等の形でそれが具体化されています。
それぞれの学校、学級で、3月の学年末に向けて、終えることができていない分野に重点を掛けることとなります。年度始めには、余裕をもってすべての教科の内容を終えられるような計画を立てています。しかし、物事はなかなか計画通りには進まないもので、冬から春にかけて、どうしてもバタバタしながら取り組むことが多いのが現状です。
また、「授業のペースが早い」ということについては2020年の後半に大きく話題になりました。新型コロナウイルスによる一斉休校によって、学校教育活動は大きな影響を受けました。新年度になっても通常の学校教育活動ができないままでした。一時は半年分のタイムラグを利用して、そのタイミングで「9月入学」にしたらどうかということも現実味を持って議論された程でした。
そういった難しい状況において、さまざまな工夫をしながら、何とか2020年度の学びの質を保とうという取組みが行われました。先ほども触れたようにその学年で学ぶ内容は法的に定められています。それらをきちんと満たそうとして、通常よりも早いペースで授業が進みました。2020年は非常時だったので、致し方ない面もあったかもしれません。
しっかりと丁寧に親の話を聞く
学校に対して「授業のペースが早いので配慮してほしい」という問い合わせ(相談・苦情)があった場合、まずはしっかりと親の話を聞きたいです。こういったテーマの連絡があった場合、そのように思っている親は1人ではないと捉える方が良いです。声に出すことはできないけれども同じように思っている親が一定数はいると考えた方が良いでしょう。
連絡をしてきた親に対して丁寧に聞き取りをすることが必要でしょう。そして、連絡をしてきた家庭の子供への対応をすることが必要でしょう。「授業が早い」ということは「内容が理解できていない」ということを意味していることが多いです。授業が早くとも学習内容の理解がきちんとできていれば、親は学校に連絡をしてくることはほとんどありません。そういったことを踏まえると連絡をしてきた家庭の子供に対して個別に対応することは適切なやり方でしょう。そういったことをすると共にそれ以外にもいると思われる似たような状況に置かれている子供への対応をしていきたいです。
学校において、その年度に終えるべき内容を終えないということは基本的には考えられません。もしそういったことが起きれば「未履修」等でニュースになってしまう程の問題となります。そういったことを踏まえると、年度末に向けて授業のペースが早くなってしまうことはしょうがない面もあります。そういった状況では先ほども触れたように苦手な子供等を適切にケアしながら、授業を進めていくことが必要なのでしょう。
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