学校現場の現実や課題、大学の教職課程の必修教科になったことの意義、一斉授業や合理的配慮等、多様な子供たちの置かれた状況を具体的に対談。まさに第一人者による必読の巻頭対談だという。
第1章は、先生のストレスを減らす多様な子供の「理解と支援」がテーマ。第2章では、最新脳科学でサポートする、どの子も伸びる支援メソッドをテーマ、神経心理ピラミッドを使って順序立てて解説する。この順序を理解することにより、支援がさらに有効になってくる。
この記事では、ADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある場合についてみてみよう。
「その子」と、「その言動」を分けるという視点
「一斉指導が難しい子が学級の中にいる。」教師の誰もが抱えている悩みです。時々。「あの子さえいなければ」と思うこともあるでしょう。そんな自分に自己嫌悪して、ストレスを感じていませんか?
最初に意識したいことは、その子の「言動」と「子供自身」を分けるという考え方です。ADHDの傾向が少しあり、授業中によく勝手に話してしまうAさん。「常に話しまくる=ダメな子」ではなく、「うっかりと話し続けている」という「言動」が課題でAさんという「存在」はOKなのです。
実は、この意識をもつことが、教師自身がストレスを軽くして、クラスの多様性に応じた工夫を生み出す原動力になることがあります。「その子の言動」と「存在」を切り離してかんがえることが理解と支援の第一歩です。
やり方を変えて「うまくいく条件」を探す
では、なぜAさんはうっかり話してしまうのでしょうか?「その時に気がつけないのは、もっているADHDタイプという特性ゆえかもしれない。この視点をもつことは大切です」と言うのは、井上薫先生です。井上先生は、特別支援教育の専門家です。専門知識と技術を使い、担任の先生をサポートしています。
「ADHDタイプ」の特性を知らずに、うまくいかないやり方を一生懸命やっていても、いつまでたっても状況は変わりません」(井上先生)
一斉指導が難しい子に対しては、まず、「この子には、何かしらの特性があるのかも?」という視点をもってみる。大切なのは、その子の特性を理解し、「うまくいく条件」(支援策)を、一緒に探していくことです。
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<協力:小学館>
発行:小学館 著/高山恵子 取材・執筆/楢戸ひかる
<編集者からのおすすめ情報>
オールカラーのビジュアル版で、各症例別に、4コマ漫画で、困り感と支援策を具体的に解説しています。特別支援教育や発達障害への理解を深めるための1冊です。