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広島県安芸太田町、AIモニタリングシステム活用し授業実践

 広島県・安芸太田町教育委員会と日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は2021年3月24日、安芸太田町の小中学校で、全国に先駆けてAIを活用した授業モニタリングシステムを導入することで、新学習指導要領が目指す授業づくりの先導的モデルを示すことが可能になることを発表。

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 広島県・安芸太田町教育委員会と日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は2021年3月24日、安芸太田町の小中学校で、全国に先駆けてIBMのAIを活用した授業モニタリングシステムを導入することで、新学習指導要領が目指す授業づくりの先導的モデルを示すことが可能になることを発表した。

 安芸太田町では、東京大学CoREFが開発した協調問題解決型の授業法の1つである「知識構成型ジグソー法」を実施してきた。授業ではまず、生徒に問題を提示した後、生徒を複数のグループに分け、課題解決のためのいくつかのヒントを分担して学習。次に、グループのメンバーを組み換え、各人が学んだ情報を交換・議論しながら問題の答えを考える。さらにクラス全体でも答えを比較検討し、最後は各自が問いに対する答えを自分の言葉で表現する。

 「知識構成型ジグソー法」は、新学習指導要領の掲げる「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を実現しやすい手法の1つだが、有効に活用するには、どの生徒が何を考え、どんな発言をしたかを現場の教員が着実に見とり、次の授業のデザインにどう生かすかが課題だった。

 そこで、東京大学CoREFでは、生徒の発話内容をIBMのAIを利用してテキスト化し、教師がいつでも確認したり、キーワード検索による分析ができる授業モニタリングシステムを開発。従来の音声認識技術では、教室内の雑音や複数生徒の発話などが要因で正確にテキスト化することが困難だったが、IBMの東京研究所を中心としたチームがIBM Watsonの音声認識技術を環境に合わせてカスタマイズすることで、認識率を実際の教育現場で実用可能なレベルまで向上させることに成功した。

 安芸太田町ではこのシステムを2020年4月から研究授業で採用。実際に研究に参加している先生たちからは、「子どもの声、つぶやきが確実に聞き取れたので、どこでつまずいているかが着実に把握できた」「発話の裏にある子どもの思考を、目に見えるデータに基づいてじっくり推測、解釈できた」などの声が寄せられた。町内では、ある授業の分析結果から、子どもの思考の特性に沿ったワークシートの作り方のコツが見出され、別の授業に生かされるといった事例も生まれたという。

 今後、東京大学CoREFは、日本IBMのAIを活用し、生徒の理解度や成長を把握・評価する教材の作成・登録と検索を高度化していく計画。また、開発した手法やツールについて、企業における人財育成・採用などビジネス用途に応用するための研究も進めていくとしている。
《桑田あや》

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