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【クレーム対応Q&A】担任の先生を変えてほしい

 保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第13回は「担任の先生を変えてほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第13回は「担任の先生を変えてほしい」。

直接その先生に伝えてくることは
ほとんどない


 学校では「担任を変えてほしい」というクレームが時折あります。こういった問題は、直接その先生(担任)に伝えてくることはほとんどありません。一般的には、話を聞くのは管理的立場である校長や副校長(教頭)、教務主任、学年主任などであることが多いです。

 「担任を変えてほしい」などに関する話が来た時には、親からの訴えをきちんと聞くようにしたいです。通常、親がいきなり「担任を変えてほしい」と思い、それを伝えてくるようなことはありません。その担任に何らかのコンタクトを取り、良い方向に変わることがないかということを試していることもあります。また、一定期間ようすを見て、状況が変わらないことを確認していることもあります。親同士は互いに情報交換をしているので、自分の子どもだけが不利益を被っているのではなく、全体が不利益を被っていることの確認もしています。そういった段階を踏んで、次のステップとして学校の管理的立場の人に伝えようとしていると考えられます。

 学校側としては基本的には「担任を変えることはできない」というスタンスで良いと思います。保護者から何らかの苦情が来たからといって、すぐに学級担任を変えてしまうようでは、学校運営が成り立たなくなってしまいます。ただ「その担任にどういった問題点があるのか」という部分についてはしっかりと聞くことは重要です。

 教室内のようすは、管理職も含めた同僚からは見えない部分があるのが事実です。「教室は密室である」という言い方をすることもあります。保護者は、家庭で子どもから直接話を聞くことができます。担任ができれば周りの教員、特に管理職に伝わってほしくないと思っている事柄も知っている場合があります。すべての教員がそのように隠し事のようなものがある訳ではありませんが、まったく無い訳ではありません。

保護者の訴えによって学校運営上の問題点が良い形に変わる可能性も


 保護者からの担任に関する訴えは、学校運営上とても重要な事柄を含んでいる場合があります。先ほども書いたようにしっかりと話を聞くようにしたいです。体罰、猥褻、パワハラなどが可能性としてはあり得ます。

 私が聞いたことがあるケースでは、ある担任は、執拗にネチネチとした説教をしていたそうです。その程度が通常レベルではなかったそうです。周りの教員はそういった事実を知らなかったのですが、実はそういった説教をする際、その教員はカーテンを閉めたり、ドアを閉じたりして、周りからはわかりにくいような状況にしていたそうです。また、別のケースでは、ある教員は怒った際、ものを投げたりしていたそうです。もちろん、子どもに当たらないようにはしている(実際に当たってはいない)ようですが、それでも十分に問題です。

 「担任を変えてほしい」という問題は、このように周りから見えにくい(敢えて見えにくくしている場合はかなり深刻です)問題を含んでいる可能性が多分にあります。学校の対応としては、訴えてきた保護者への対応とその担任への対応になります。訴えてきた保護者に対しては、「担任は変えられないが、学校としてきちんと対応していく」ということを伝えていくことになります。それと共にその担任に対して、状況の説明を求め、改善すべき点については改善を求めていくこと必要です。さらに問題の内容によっては、この時点で市区町村の教育委員会の担当者へ連絡を入れる場合もあるでしょう。

 「トラブルは成長のチャンスでもある」とよく言われます。保護者の訴えによって学校運営上の問題点が良い形に変わる可能性もあります。適切に関わっていきたいものです。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられたクレームのほか、保護者が学校へ伝えたクレーム等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたいクレーム事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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