教育業界ニュース

困難な保護者対応を整理する5類型別チェックリスト

 岐阜県教育委員会が2025年3月に作成した「学校に対する過剰な苦情や不当な要求への対応マニュアル」をもとに、教職員が自身の対応状況を整理するためのチェックリストと、対応終了時の発言例を紹介する。

教材・サービス 校務
画像はイメージです
  • 画像はイメージです

 保護者等からの苦情への対応では、学校の指導や対応への保護者等の不安や焦り、苛立ちといった感情をまず受け止めることが重要だ。そのうえで、丁寧にかつ誠意に対応し、感情面の修復を図りながら、原因への対応を進めていく必要がある。

 しかしながら、中には過剰な苦情や不当な要求、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に該当し得る事案も存在し、それらの対応は教職員のストレスや心的負担を高め、授業準備や学級経営などの本来業務を圧迫する深刻な問題といえる。

 こうした状況を受け、多くの都道府県・政令指定都市教育委員会では、教職員のストレス・心的負担の軽減、対応時間の削減による学校運営の効率化、そして保護者との建設的なコミュニケーションの促進を目的に、ガイドラインや対応指針を策定している。文部科学省が公表している「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求への対応に関する教育委員会における取組について」によると、一次対応時の基本姿勢や組織的な対応体制、具体的な対応方法などを示している自治体もある。

 岐阜県教育委員会が2025年3月に作成した「学校に対する過剰な苦情や不当な要求への対応マニュアル」は、困難事案を5つの類型に分類し、それぞれの類型に応じた対応のポイントを示している。以下では、この「5類型」をもとに、事案の類型や対応のポイントを整理できるよう、一次対応時のチェックリストとしてまとめた。類型4以外については対応終了時の発言例についても紹介する。

 こうした対応は、自校や教育委員会が定めるガイドラインに基づいて行うことが前提となる。本記事のチェックリストは、対応に迷った際の参考資料として活用してほしい。

5類型別チェックリストと対応のポイント

類型1 時間拘束・反復型

 申出・要求を執拗に繰り返し、その対応に教職員が長時間拘束され業務に支障が出るケース。

<チェックリスト>
 □ 頻繁な来訪や電話により、執拗に苦情を言う
 □ 十分な説明を行ったあとも、同じ要求を繰り返す
 □ 対応者の交代を要求し、同様の苦情を繰り返す
 □ 業務に関係のない話をし続ける

■対応のポイント
 長時間におよぶケースでは、不正確な状況の把握・判断、誤った説明・回答、対応の放置が、トラブルを深刻化させるため、必ず誠実かつ適切に、不足や誤りなく対応しきってから、対応を終了する。

 具体的な対応や謝罪の要求の場合は、要求に対して、あいまいな態度をとらず、対応できないことはその根拠を説明してはっきりと断る。回答できない段階(事実関係の確認ができない段階)では、確認する、検討するなどの方向性をしっかり示す。

 同じ話の繰り返しや、連日にわたって繰り返される場合は、申出内容を把握した旨を相手に伝え対応を終了する。それでも終わらなければ対応できる時間を伝え、それ以上に長い対応はしない。

【対応終了時の発言例】
「長時間になっており、ご用件もすでに伺いました。ほかの業務がありますので、電話を切らせていただきます。」(相手が話を続けようとしても打ち切る)
「この件については、これまでに十分ご説明しております。学校からこれ以上お話しすることはありませんので、今後のお問合せはおやめください。」
「ご指摘いただいた誤りについては、お詫びして訂正しました。これ以上の対応はできませんので、お引き取りください。」
「(相手が論点をずらして話を引き延ばそうとしても)こちらが対応できる時間は過ぎておりますので、電話を切らせていただきます。」

類型2 暴言・威嚇・脅迫型

 暴言、罵声、脅迫的・侮辱的な発言などにより、教職員が委縮してしまい業務に支障が出るケース。

<チェックリスト>
 □ 大声で恫喝する
 □ SNSへの掲載やマスコミ・議員への情報提供をほのめかして脅す
 □ あらさがしをしたり、あげ足をとって責め立ててくる
 □ 教職員の人格を否定するような言葉や、侮辱的な言葉を浴びせる

■対応のポイント
 威圧的な態度や暴言等がある場合は、相手の態度や話し方は「怖い」ということ、児童生徒への悪影響のおそれを率直に伝えて警告する。暴力行為等があれば、問題となる行為を相手に明示したあと、話し合いを打ち切って警察に相談する。威嚇や脅迫的行為には応じない。

【対応終了時の発言例】
(威圧的な態度、暴言等の場合)
「そのように大きい声を出されると、とても怖く感じますので、静かに話してください。」
「大声を出される方とは、怖いのでお話しすることができません。」
「廊下を児童生徒が通り、不安を抱かせますので、落ち着いてお話しください。」
「十分に聞こえておりますので、落ち着いてお話しください。」
「(具体的な発言)のようなことをおっしゃるのであれば、これ以上は対応できません。」
「落ち着いてお話しいただけないのであれば、電話を切らせていただきます。」
「(警告した内容)と繰り返し申し上げましたが、聞き入れていただけませんでしたので、これで失礼します」

(威嚇の場合)
 「教育長(知事)に手紙を書く」「人事当局に告げる」「議員に頼む」「訴訟を起こす」「マスコミに流す」「SNSにアップする」などと脅されても止める根拠のないことには回答せず、売られたケンカを買うような発言は控える。

「それについては△△さんのご判断ですので、何も申し上げられません。」
「ご要望に添えないことについては、先ほど申し上げたとおりです。」

(脅迫的行為の場合)
 できないことはできない、と毅然とした態度で対応する。

『誠意を見せろ』→「誠意とは具体的にどのようなことですか。これ以上無理な要求をされますと、然るべきところに相談いたします。」
『色を付けろ』 →「わかりやすくはっきりおっしゃってください。」
『責任を取れ』 →「具体的に何をすればよろしいでしょうか。」
『土下座しろ』 →「土下座には応じかねます。人権的な見地からもできません。」

(公表目的による録音の場合)
 守秘義務を理由にその中止を求める。

「教職員には守秘義務がありますので、録音された会話が公表されると知りながら、このまま話し続けることはできません。録音はおやめください。」

類型3 権威型

 正当な理由なく権威を振りかざして特別扱いを要求したり、文書等での謝罪や土下座などを要求するケース。

<チェックリスト>
 □ 優位な立場を利用したりほのめかしたりして、特別扱いを要求する
 □ 「校長を出せ」など上位者による対応を要求する
 □ 「担任を代えろ」「女じゃだめだ」など不合理な理由で担当者の交代を要求する
 □ 「誠意を見せろ」となどと言い文書での謝罪を強要する

■対応のポイント
 相手の地位・立場にかかわらず、特別扱いはできないことを伝え、自分の要求が通ると勘違いされないよう、毅然と断る。上位者等への交代を要求されても、どの教職員が対応するかは組織として判断する。また、約束文や念書など、書面の作成要求に応じる義務ないため、こうした要求には応じない。相手に対する誠意は、金品の交付や土下座で示すものではないため、とことん説明することによって示す。

【対応終了時の発言例】
(特別扱いの要求の場合)
「この件について○○先生(議員)にお話しされても、県が対応を変えられるものではありません。」
「ご要望に添えないことについては、先ほど申し上げたとおりです。」

(上位者への交代要求の場合)
「この件は私が担当ですので、私が責任をもってお話を伺います。」
「校長には私から報告、相談し、組織として回答いたします。」
「誰が対応させていただくかは組織で判断しますので、お時間をください。」

(念書等の作成要求の場合)
「ご指摘の点についてはお詫びして訂正しましたので、これ以上の対応はできません。」
「口頭で丁寧に説明をさせていただくことになっております。」

類型4 インターネット・SNS誹謗中傷型

 特定の教職員を識別できる情報や業務への対応のようすをインターネット上で公表するなど、教職員のプライバシーを侵害し、または業務の適正な遂行を妨げるケース。

<チェックリスト>
 □ インターネット上で特定の教職員の氏名を公開して非難する
 □ 教職員の顔や名札を撮影し、SNSに投稿する
 □ 教職員とのやりとりを録画(録音)し、SNSに投稿する

■対応のポイント
 保護者等が教職員を撮影しようとする場合は、肖像権を理由にその中止を求める。相手が公表(不特定または多数の者への提供を含む)する目的をもって教職員との会話を録音しようとする場合は、守秘義務を理由にその中止を求める。中止の要請に応じない場合は、対応を終了し、校内で対応している場合には校内(校舎の建物・敷地)からの退去を命じる。

 なお、相手がすでに入手している教職員の画像や動画、教職員との会話の音声記録については、教職員のプライバシーの侵害や県の業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることを理由に、インターネット上に掲載(SNSに投稿)しないよう求める。

類型5 セクシュアルハラスメント型

 教職員に対して性的な言動を行うケース。

<チェックリスト>
 □ 性的な内容の冗談を言う
 □ 業務に関係のない個人情報(住所、年齢、婚姻の有無等)を聞き出す
 □ 食事などに執拗に誘う、待ち伏せする
 □ 身体に触る

■対応のポイント
 性的な言動に対しては、保護者等にやめるよう警告し、録音・録画による証拠を残す。2回(身体接触については1回)警告してもやめない場合は、対応を終了。執拗なつきまとい・待ち伏せ行為に対しては、庁内の秩序を乱すおそれがあることを理由に、校舎の建物や敷地からの退去や、立入禁止を命じる。これらの対策を講じても収まらない場合は、組織として、警察や弁護士への相談等を検討する。

【対応終了時の発言例】
「その発言はセクハラにあたりますので、やめてください。」
「この会話は録音しています。続けられるのであれば、弁護士や警察に相談します。」


 なお、文部科学省「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求への対応に関する教育委員会における取組について」では、都道府県教育委員会や指定都市教育委員会が作成した、保護者等からの過剰な苦情や不当な要求への対応マニュアルや手引きを見ることができる。

《編集部》

この記事はいかがでしたか?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top