東京海上日動火災保険と日本工営は、全国の自治体・教育委員会が取り組んでいる通学路安全点検の効率化と安全対策の高度化を支援するため、「通学路安全点検支援システム」を開発した。今後、このシステムを全国の自治体や教育委員会へ提供し、未来を担う子供たちの安心・安全な通学環境づくりに貢献していく。
2021年に千葉県八街市において下校中の児童の列にトラックが突っ込み、5名が死傷する痛ましい交通事故が発生した。この事故を受け、文部科学省、国土交通省、警察庁が連携し、全国の自治体に対して通学路の合同点検を通知しており、通学路安全点検は子供の安全を守るための重要な取組みとして全国の自治体に定着している。
両社は2023年度から、内閣府SIP第3期「スマートモビリティプラットフォームの構築」において「デジタル・スマートモビリティによるシェアードスペースの実現」の提案が採択され、安全、快適、活気あふれる交通インフラ技術の開発、モビリティサービスを支えるデータ基盤構築などを推進してきた。このプロジェクトを通じて、各地の自治体へ交通安全実務における課題のヒアリングを行う中で、通学路安全点検における課題を確認し、解決に向けて本システムの開発に至ったという。
通学路安全点検においては、学校、PTA、教育委員会、道路管理者、警察など多くの関係者が連携して安全点検を進める中で、要望書の手書き作成や電子データでの取りまとめなど、手段が統一されておらず、アナログ作業を含む情報の共有・集約に大きな作業負担が生じている。
また、 危険個所の評価は担当者の経験や感覚に依存しているため、優先順位付けが難しく、関係者間での納得感にもばらつきが生じる。要望個所や対策結果が地図上にデータとして統合・管理されていないため、過年度の情報の引継ぎや確認に時間を要するといった課題があげられる。
新たに開発された「通学路安全点検支援システム」は、学校・PTAから教育委員会、行政関係者といった関係者による、地域全体での通学路安全点検の効率化と安全対策強化を支援するWebサービスであり、関係者の業務を一貫して支援。PTAなどの学校関係者は、スマートフォンを使い、現地の写真や位置情報とともに危険個所や対策要望を簡単なステップで入力・報告できる。報告された要望は地図上に自動で集約・可視化され、学校関係者はリアルタイムで内容を確認できる。
教育委員会や行政関係者は、PCですべての要望を同システム上で確認し、各要望の担当部署設定や「検討中」「対策済み」といったステータス管理を直感的に行うことができる。関係者間の円滑な情報共有と進捗管理を実現し、教育委員会や行政関係者の取りまとめや報告業務の負担を大幅に軽減する。
さらに、東京海上日動が保有する自動車保険の事故データや通信型ドライブレコーダーの危険運転データ等を道路交通関連データと掛け合わせて、AIを活用して分析した独自の「交通事故発生リスクマップ」を搭載。このリスクマップにより、交通事故発生リスクデータを確認でき、安全対策の優先順位付けを支援する。行政関係者は対策が完了した個所について、その内容をシステム上に記録・蓄積し、Webサイト上で公開することで、次年度以降の活動の効率化を図ることができる。
両社は、全国各地の自治体や教育委員会へ本システムを提供することを通じて、持続可能な形で通学路の安心・安全を守ることに貢献していく。また、東京海上日動においては、小学校低学年向け「DAP(でぃーえーぴー)こうつうあんぜん授業」の展開も進めており、データやテクノロジーを活用したソリューションの提供を通じて、交通事故のない社会の実現を目指していくという。