東京医科大学と新潟県は2025年4月21日、医師育成に関する連携協定を締結した。双方が緊密に連携・協力して次代の地域医療を担う医師を育成することを目的としており、医師養成課程における連携に関する事項や臨床研修・専門研修に関する事項などで連携・協力し、東京医科大学の医学教育のさらなる向上を図るとともに、新潟県の地域医療に貢献する人材育成に取り組む。
東京医科大学は、新潟県と2021年12月17日に県内の医師不足や地域偏在を解消し、安定的な地域医療の確保を目的に医学部地域枠に係る協定を締結した。さらに、2022年には自由選択科目として少人数ゼミ形式の「地域医療リーダーズコース」(対象:第1~5学年)を開設し、地域医療に貢献する人材育成を行ってきた。また、新潟県の高等学校との連携プログラムを通じ、医学部進学を目指す高校生への支援も実施するなど、県との連携を重ねてきた。
この相互の取組みの大きな転機となったのが、医学科第5~6学年で実施される「診療参加型選択臨床実習(Clinical Clerkship II)」における「長期滞在型臨床実習(Longitudinal integrated clerkship、LIC)」の導入である。LICでは学生が、従来の1か月単位で各診療科をローテートする体制から、3か月間診療科をローテートせずに多くの科の診療に触れ、臨床研修医に近い役割を果たしながら臨床実習を行うことが特徴である。
現在、医学教育では診療参加型実習の導入や、プライマリケアに関する臨床推論能力、全人的に患者を診る診療能力の養成が強く求められている。しかし、高度先進医療を提供する大学病院での実習だけでは、それを十分に実現するのは難しいのが現状である。この課題に対応するため、東京医科大学は2025年4月より新潟県の地域基幹病院でLICを開始した。
従来、県と大学の関係は、地域枠で入学した学生を大学が教育して地域に戻すという「依頼と提供」の枠組みにとどまっていたが、今回のLICの実施は「協働して新たな価値を創成する試み」となる。これを契機に、卒前教育はもちろんのこと卒後の医師のキャリア形成支援を含めた充実した医師養成体制を整えるため、この連携協定が締結された。東京医科大学は医学教育のさらなる向上を図るとともに、新潟県の地域医療に貢献する人材育成に取り組んでいくとしている。