千葉大学は2022年12月9日、慶應義塾大学の研究チームと共同で進めた子供の不安の問題を予防する認知行動療法(CBT)プログラム「勇者の旅」の短縮版を用いた効果検証の結果、小学校において子供の不安を軽減する有意な効果が示されたと発表した。
研究は、千葉大学子どものこころの発達教育研究センター・浦尾悠子特任講師、同大大学院医学研究院認知行動生理学・吉田理子非常勤講師、清水栄司教授、慶應義塾大学佐藤泰憲准教授の研究チームが進めたもの。2014年に開発した「勇者の旅」が1セッション45分、プログラム終了までに10週間かかり、実際の教育現場での導入が難しいという課題を抱えていたことから、朝学活等の短時間でも実施可能な短縮版「勇者の旅」プログラムを開発。効果検証に着⼿した。
不安症(不安障害)は、⼦供にも⼀般的にみられる精神疾患。⼦供の⾃尊⼼に悪影響を及ぼし、学業成績の不振や社会と関わることを避ける、友だちとの関係づくりが難しくなるといった影響が出る場合があり、学校を⽋席しがちになる⼦供もいる。
「勇者の旅」短縮版は、1セッション20分、全14セッションで構成。効果検証は、⼩学校に通う5年⽣(10~11歳)の児童90人を対象に、朝学活の時間帯にプログラムを取り入れた。児童は「勇者の旅」短縮版プログラムを受ける介⼊群と、受けないコントロール群とに分け、プログラム実施前と実施後、プログラムを受けてから2か⽉後にそれぞれアンケートを実施。不安症状や⾏動問題の度合いを評価した。
その結果、介⼊群の児童の不安症状が、コントロール群に⽐べて統計的に有意に減少していることが確認されたという。⾏動問題においても同様の傾向が認められ、「勇者の旅」プログラムが短縮版で実施された場合でも、先⾏研究と同様に効果があることが示された。なお、⼦供の不安症状は「スペンス児童⽤不安尺度(SCAS)」を、⾏動問題は「⼦どもの強さと困難さアンケート(SDQ)」を使⽤して測定。
今回の検証結果により短縮版の効果が確認できたことから、今後はより多くの学校へ導⼊され、たくさんの⼦供たちが「勇者の旅」プログラムを受けることで不安障害の軽減に寄与することが期待される。同研究成果は10月25日付で学術誌「BMC Psychiatry」に掲載されている。