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学校インターネットの「集約接続」とは?接続方式ごとの特徴や回線速度への影響

 GIGAスクール構想による小・中学校への1人1台端末の整備は完了したものの、肝心のインターネット環境についてはいまだに課題が残っている。今回は、学校のインターネット接続における通信方式とそれぞれの特徴、回線速度への影響についてみていく。

ICT機器 授業
学校のインターネット接続方式の割合
  • 学校のインターネット接続方式の割合
  • 学校における児童生徒用端末からのインターネット接続速度の実測結果(学校から直接インターネット接続の場合)
  • 学校における児童生徒用端末からのインターネット接続速度の実測結果(学校の回線を集約してインターネット接続する場合)

 GIGAスクール構想による小・中学校への1人1台端末の整備が完了し、ICT端末を「とにかく使ってみる」というフェーズから「いかに有効活用するか」という段階に入りつつある。しかし、端末の環境は整ったものの、肝心のインターネット環境についてはいまだに課題が残っている。今回は、学校のインターネット接続における通信方式とそれぞれの特徴、回線速度への影響についてみていく。

 学校のインターネット接続については、大きく分けて「学校から直接インターネットに接続する」「学校ごとの回線を自治体等が集約し、インターネットに接続する」「LTEで接続する」の3パターンが存在する。

 文部科学省が2021年8月に公表した「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果」によると、学校から直接接続している自治体等は全体の62.4%、学校回線を集約接続している自治体等は33.2%、LTEで接続している自治体等は3.0%だった(2021年5月末時点)。前回調査(2020年9月末時点)と比較すると、集約接続していた自治体等数は921から603に減少しており、300以上が接続方式を変更していることになる。

学校のインターネット接続方式の割合
※「自治体等」とは都道府県、市区町村、一部事務組合を含む公立学校情報機器整備費補助金の対象である公立の義務教育段階の学校設置者。

集約接続方式が抱える問題点

 学校回線を集約してインターネットに接続する場合、学校から直接接続する場合と比べてボトルネック(※)となりうる個所は多くなる。各学校でのインターネット利用が増えれば、接続を集約する段階で回線が混雑するからだ。実際に、各自治体等が実施したネットワーク環境の事前評価(アセスメント)でも、「センター集約型のため、回線が逼迫しており接続が不安定」といった課題が判明し、学校から直接接続する方式に変更を決めた自治体等もあったようだ。

※通信ネットワークのボトルネック:情報の流通経路のうち、もっとも情報の流れが遅くなる部分、速度低下を招く要因のこと。

 「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果」で示された、学校規模・時間帯ごとの通信速度の実測結果をみると、接続方式の違いによる回線速度への影響がうかがえる。集約接続は、学校から直接接続する場合と比べ、全体的に速度が低くなる傾向がみられた。特に、アクセスが集中する時間帯である11時から12時では、400人以下規模の学校でダウンロード速度が100Mbpsを下回っていることがわかる。

学校における児童生徒用端末からのインターネット接続速度の実測結果(学校から直接インターネット接続の場合)
学校における児童生徒用端末からのインターネット接続速度の実測結果(学校の回線を集約してインターネット接続する場合)

コストはかかるがICT活用の幅が広がるLTE接続

 もうひとつの接続方式としてあげられるのはLTE接続だ。Wi-Fi環境がない校庭や校外学習、家庭での持ち帰り利用においても端末でインターネットに接続することができるため、ICT利活用の幅が大きく広がることが期待できる。しかし、端末がLTE通信に対応している必要がある(※)他、Wi-Fiと比べて通信料が高くなってしまうというハードルもあり、LTE接続を主とする自治体等は全体の3.0%(54自治体等)での採用に留まっている(2021年5月末時点)。

 なお、たとえば群馬県下仁田町では、Wi-FiとLTE通信のハイブリッド方式を採用している。学校のWi-Fiが利用できる場所ではWi-Fiで、校庭での体育や校外学習ではLTEで、というように両者を使い分けており、コストの問題を回避しつつ学校内外でICT利活用を進める好例だ。

平井聡一郎先生と群馬県下仁田町教育委員会の対談記事はこちら

※1人1台端末の標準仕様書では「LTE通信に対応していること」という項目があるが、「家庭学習や校外学習での通信方法を検討した結果、LTE通信機能について、不要であれば削除しても構わない(削除することでより安価な端末を整備できる可能性がある。)」としている。

リシード「学校インターネット回線速度計測」

 リシードでは、「学校インターネット回線速度計測」サービスを提供している。利用料は無料で、全国の学校で利用できる。

リシード「学校インターネット回線速度計測」

 「学校インターネット回線速度計測」は、サーバ環境に左右されない通信速度測定システムとして定評があり、今年サービス開始20周年を迎えた「RBB SPEED TEST(アールビービー スピードテスト)」を、学校向けに改良して提供するもの。

 全国の国公立・私立「小学校」「中学校」「高等学校」「大学」「専門学校」に対応しており、学校名・接続状況・回線(不明な場合は選択不要)を選択して測定するというシンプルな操作で利用し、授業前の確認、教室や機器ごとの回線速度の違いの把握などに活用できる。

 「学校インターネット回線速度計測」を定期的に実施し、上掲の内容とあわせて学校の回線環境の把握・改善に役立てていただきたい。


《多賀秀明》

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