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【クレーム対応Q&A】体育座りをやめさせて

 子供の身体の成長は早いものです。不適切な姿勢等をしているとそれが健康を害することにつながる可能性があります。今回のテーマは「体育座りは身体に負荷がかかるからやめさせてほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまなクレームや相談。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第84回のテーマは「体育座りは身体に負荷がかかるからやめさせてほしい」。

体育座りとは


 子供の身体の成長は早いものです。不適切な姿勢等をしているとそれが健康を害することにつながる可能性があります。最近、子供の「体育座り」が注目されています。「体育座り」は、体育館等の床に座る際、両手で膝を抱える座り方です。体育館に集まる全校朝会等では「体育座りで座ってください」と指示をすることが多いです。また、体育の際には、待つ姿勢として行われることが多いです。

 その「体育座り」ですが、腰等に負担が掛かるので子供の体に悪いという指摘がされています。学校は多くの子供がおり、ある程度形を揃えることをしていかないと、バラバラで混乱した状態になってしまいます。そういったこともあり、教師はある形、今回の例では「体育座り」で全体を揃えようとします。揃っている方がさまざまな点で効率も良くなります。そういったこともあり「体育座り」を中心とした、皆で揃えること等が学校で多く用いられています。

戦前の名残も


 私自身、ずっとそういった場所で自分自身も学んできましたし、大学卒業後、そういった環境で教えてもいました。その後、大学に移り、学校体育の歴史等を調べてみると、意外なことがわかりました。それは、現在の日本の学校体育は、戦前の軍隊の時の名残があるということです。たとえば「行進」や「前にならえ」等がそれにあたります。昭和10年代の学校での指導内容を調べると現在の「体育」は「教錬」という科目名でした。内容は現在の体育のものに加え、軍事訓練的なものがたくさん含まれていました。戦後、新しい教育基本法ができ、学習指導要領が作られていく中で、軍事訓練的なものの多くは削除されました。そういった中でも少しだけ残ったものが「行進」や「整列」等です。

子供の健康を考えて対応する


 現在の社会状況、教育状況において「一糸乱れずに行進すること」や「体育座りで全く動かずに話を聞くこと」等は、少し違和感があると私は感じています。今回のテーマである「体育座り」についても、腰等に良くない影響があるのではということであれば、違う方法(座り方)に変えていくのが妥当なのではと思います。たとえば、胡座等の座り方も可とすることや椅子を用意して座ること等です。子供の体を考え、良い状況に変わっていくと良いと思います。

 ところで、今回の「体育座り」と少し似たものに教室での椅子に座る際の「立腰教育」があります。腰骨を伸ばして、良い姿勢で椅子に座るというものです。私は教室での「立腰教育」については推進していった方が良いと思っています。椅子の座り方が乱れる(机の上に肘をついて顎を支える等)と、背骨に影響を与えます。成長期の子供は、脊柱側弯症になる可能性もあります。そういったことを考えると、教室で長い時間座っている椅子に関しては、正しい姿勢で座るということを意識させていった方が良いと思います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。
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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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