知能検査は人間ドックのようなもの
このところ、発達障害をテーマとする記事を書いてきました。発達に偏りがある子供においてとても重要になるものが「知能検査」です。子供に対しては「WISC-IV」等が現在よく行われているものです。そういった検査は教員の立場からすると、その子供との関わりを考えるうえでとても頼りになるものです。ただ、親の中には、知能検査等に拒絶反応のようなものを示す人もいます。今回は、「知能検査を受けたくない」をテーマとしたいと思います。
私は現在の大学で教員養成に携わっています。その前は22年間、小学校の教員をしてきました。学級担任として多くの子供や親と関わってきました。そういった中で、教員から見て、知能検査を受け、適切なケアを受けた方が良いと思われる子供なのに、親がそういったものを拒否するようなケースに出会うことが時折ありました。もちろん在籍は通常学級になるのですが、なかなか適切なケアを受けることもできないことが多いです。子供本人にとっても、周りの人(友達、担任等)にとってもあまり良いとは言えない状況が続くことが多かったです。
私はそういったケースに接した時、「知能検査は普通の病気の場合の人間ドックのようなもの」と親に伝えていました。癌等の通常の病気の場合、検査をすること無しに手術をすることはあり得ません。たとえば、胃の調子が悪かったら、バリウム等を飲んでレントゲン写真を撮ったり、胃カメラを飲んで細部を検査したりします。もちろん、血液検査等もするでしょう。そのように色々な検査をしたうえで、手術をするのか、化学療法にするのか等を決めていきます。状況によっては、さらにそういったデータをもとに他の医者の意見を聞くこと(セカンド・オピニオン)をする人も多いです。先ほども書いたように、検査をしていなかったら、医者はお手上げなのではと思います。
知能検査で状態を把握し、適切なケアを
発達に偏りのある子供にとって、知能検査は通常の病気の際の人間ドック等の検査に相当すると私は考えています。発達に関し、その子供の状態がわかることで、次に取るべき方策が見えてきます。知能検査等を受けない状態は、胃の詳細な検査をすること無しに開腹手術をしようとしているようなものだと思います。知能検査によって、その子供の強い部分、弱い部分が見えてきます。子どもが受ける「WISC-IV」の場合、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の項目となっています。そういった状態が把握できるからこそ、適切なケアをすることが可能となります。弱い部分をケアしていくことで、トラブル等を防ぐようにしていくことができます。トラブルが減ることで、自己肯定感が低くなることを防ぐこともできるようになります。また、強い部分をさらに伸ばしていくことで、その子供が活躍できるようにしていくこともできます。将来の職業選択とも関係してくる場合もあります。私は、知能検査は発達に偏りのある子供だけでなく、すべての子供が受けた方が良いのではと思っています。そういったことが、親や教師の子供の関わり方に良い影響を与えると思います。
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