教育業界ニュース

【相談対応Q&A】宗教上、給食で食べられないものがある

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第182回のテーマは「宗教上、給食で食べられないものがある」。

事例 その他
画像はイメージ
  • 画像はイメージ

 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第182回のテーマは「宗教上、給食で食べられないものがある」。

外国につながる子供が増え、
多様性を学ぶ機会に

 現在の日本は社会状況の変化(労働力不足など)もあり、以前よりも外国人が増えてきています。学校も社会の一部であり、外国人が増えています。文科省発表の教育基本統計によると2023年度の全国の小学校(国公立私立含む)の全児童数604万9,685人の中で、外国人児童数は8万6,017人となっています。割合では1.42%です。この割合は、地域によっても違いあるでしょう。また、日本国籍であっても、親が外国籍である場合などの「外国につながる子供」などを含めるともう少し割合は高くなることでしょう。

 このように、外国につながる子供が日本の学校に増えてくることは「多様性を学ぶこと」などにおいて大きくプラスに働くと私は思っています。私も横浜市の小学校の担任をしていたクラスにロシア人の男児と中国人の女児がいたことがあります。特にロシア人の男児は日本語がほとんど話せない状態での転入でしたので、さまざまな刺激のある1年でした。担任だけでなく、周りの子供にとっても日本人だけで構成されているクラスの時とは違った学びがあったのではと思います。

風習の違いや宗教が、学校教育活動と衝突することも

 ただ外国につながる子供が増えてくると対応に苦慮することも出てきます。文化的な風習の違い、宗教に関することなどです。たとえば、私が担任をしたことのあるペルーに祖を持つ日系人の女児は金のピアスを付けていました。生まれた時からお守りとして付けているものだとのことでした。その小学校のルールではもちろんピアスは禁止でした。対応に苦慮したのを覚えています。

 外国につながる子供のすべてについてではないのですが「宗教」も難しい問題です。日本人の子供でもさまざまな宗教のしきたりと学校教育活動の間でぶつかりが起こることがあります。「運動会の騎馬戦への不参加」や「修学旅行の際の寺社を訪問できない」などです。そういった問題の中で対応が難しいものが「食べ物(給食)」です。毎日の学校生活に影響を与えるからです。代表的なものとしては「イスラム教徒が豚肉などを食べないこと」などです。調べてみると、実際の学校給食の現場においては、イスラム教徒対応の「ハラル給食」を実施しているところはほとんどありません。小規模の園でハラル対応の給食を出しているところがありました。茨城県のつくば市では「市長への手紙」に「ハラール給食を提供してほしい」という意見があり、それに対して市として、現状としては難しいという回答がされています。現在の学校におけるハラールを含めた宗教食に関しては「お弁当の持参」という対応をしているところがほとんどです。また、給食以外にも、断食月(ラマダーン)、日に何度かある礼拝などの問題もあります。そういったことを考え、日本の学校ではなく、それぞれの宗教・国家・民族の学校を選択する子供達も多いようです。

解決策は…

 はじめにも書いたように日本で暮らす外国人は増えています。観光などで訪れる人も増えています。今後、そういった流れはさらに進んでいくでしょう。日本にいる人は誰でも、さまざまな形で外国につながる人たちと関わる機会が出てくることが予想されます。そういったことを踏まえると、給食も含めて、今よりも良い形で取り組んでいくことができればと思います。1食分でも対応できるような仕組み(仕出しのお弁当のようなもの)が学校給食でもできるようになると良いのでしょう。これらは1つの学校や数校のレベルでは対応がしにくい問題です。もう少し大きなレベル(市区町村教委、都道府県教委など)でまとめて対応ができるようになると良いのかもしれません。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

質問をする
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

+ 続きを読む

この記事はいかがでしたか?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top