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【相談対応Q&A】いじめ疑惑、学校で調査して

 「子どもの持ち物へのいたずらなどがあったのですが…」という連絡が保護者からあることがあります。こういったケースでは迅速な対応が求められます。

事例 その他
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 学校に寄せられるさまざまな相談。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第26回は「子どもの持ち物に落書き、破損などがあり、いじめが疑われる。子どもに聞いても何も答えてくれないので、学校で調べてもらえないか」

迅速に対応を


 「子どもの持ち物へのいたずらなどがあったのですが…」という連絡が保護者からあることがあります。こういったケースでは迅速な対応が求められます。

 教員はクラスで子どもたちのさまざまな様子を見ています。保護者から「いたずらがあった、いじめでは?」という様な連絡があった際は、何となく心当たりがある場合も多いと思います。子ども同士での色々なトラブルがあった時に、教師がどのタイミングで関わるのかということは難しい問題です。早いタイミング(問題が小さなうちに)で教師が関わることで、問題は大きくならない可能性はあります。ただそれは教師の関わりによって解決したことです。子どもの成長ではないので、また繰り返されることや悪化する場合もあります。

 どのタイミングで関わるのかは、さまざまなバランスの中で決まってくるものだと私は考えています。揉め事になるのがわかっていても、担任である私があえて関わらずに様子を見ていたこともあります。結局、色々と揉め事になるのですが、そこにおいて当人たちが学ぶことにつながれば良いと思います。それは子どもの性格や状況などによって、違ってきます。

 今回のケースのような場合はできるだけ早く対応することが望まれます。まず、いじわるをされている子どもから話を聞くことをします。自分から担任にいじわるがあったことを伝えていなかった状況を考え、丁寧に関わることが大切です。自分で伝えてきていなかったということから考えられるのは次のようなことです。

1.「されていることがひどい(嫌な)ことだとは認識していなかった
2.「いたずらをされているということを担任に知られたくなかった

 どちらであっても対応が必要なのですが、1つ目の場合はそれ程、対応は複雑ではありません。保護者と子どもの認識の違いがポイントとなります。いたずらをされている子どもに話を聞いた上で、いたずらをしている子どもに指導をします。そして、保護者には「本人はあまり気にしていないこと」、「相手にはいたずらは良くないことなどを伝えたこと」を知らせるという流れになるでしょう。

 難しいのが2つ目の場合です。形式的に道具などへのいたずらをさせないようにしても問題の解決にはなりません。多くの場合、形を変えて、違う形でのいじわるが行われてしまうからです。望ましいことは、こういった状況にならないように日頃から集団への関わり、個人への関わりを丁寧に行うことです。いじわる(いじめ)だけではないのですが、問題を発生させないためにエネルギーを掛けることがとても大切です。一度、問題が発生すると、どうしても対応が後手後手となることが多いです。

 今回のケースのように何らかの問題が発生した場合、被害者へのフォロー、加害者への指導、その他の子どもへの指導、保護者への対応などが必要になります。教員が適切な対応を取らなければ、状況はどんどん悪化していくことが予想されます。個人に対し、集団に対し、可能な限り迅速にあらゆる方法で対応していく必要があります。

 アメリカの心理学者マズローは「欲求段階説」というものを発表しています。下位の欲求が満たされることで上位の欲求を持つことができるというものです。いじめがある状況は、下から二番目の「安全欲求」、三番目の「社会的(所属・愛)欲求」が脅かされている状態です。学ぶことなどはより上位の欲求となります。いじめの状況を改善することなしに、他の活動を進めていったとしても、質の良い活動になりません

 クラスで起こるさまざまなトラブル(いじわるなど)は、教師に起因する問題も少なくありません。教師はしっかりと自分の職責を自覚し、日々の研鑽を積んでいくことが大切なのだと思います。

【シリーズ名変更のお知らせ】「クレーム対応Q&A」シリーズにおきまして、長期連載する中で、クレームではない保護者からの相談についても、このシリーズ内でご紹介してまいりました。特に悩みを抱える保護者からの相談につきまして「クレーム」という表現は相応しくなく、シリーズ名を「クレーム対応Q&A」「相談対応Q&A」と分けることにいたしました。ご意見をいただいた読者の方に感謝申し上げるとともに、ご不快に思われた方々にお詫びを申し上げます。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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