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【v教育ICT Expo】「『withコロナの学び方改革』とEdTech導入補助金」に44の質問…基調講演Q&Aまとめ

 2020年5月21日に開催したオンラインライブイベントより、経済産業省商務・サービスグループ サービス政策課長(併)教育産業室長 浅野大介氏による基調講演「『withコロナの学び方改革』とEdTech導入補助金」で寄せられた質問の回答を紹介する。

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2020年5月21日に開催したオンラインライブイベントより、経済産業省商務・サービスグループ サービス政策課長(併)教育産業室長 浅野大介氏による基調講演「『withコロナの学び方改革』とEdTech導入補助金」
  • 2020年5月21日に開催したオンラインライブイベントより、経済産業省商務・サービスグループ サービス政策課長(併)教育産業室長 浅野大介氏による基調講演「『withコロナの学び方改革』とEdTech導入補助金」
 withコロナ/afterコロナにおいて、子どもたちの学びを止めないための利活用に期待が高まる教育ICT。「バーチャル教育ICT Expo」では、子どもたちを、そして教育現場を支援する選りすぐりのサービス、プロダクトを紹介していくとともに、教育ICTの専門家による映像セミナーを実施している。

 ここでは、2020年5月21日に開催したオンラインライブイベントより、経済産業省商務・サービスグループ サービス政策課長(併)教育産業室長 浅野大介氏による基調講演「『withコロナの学び方改革』とEdTech導入補助金」に寄せられた質問に対して、講演終了後にいただいた回答を紹介する。回答は、2020年6月4日時点の「EdTech導入補助金」公募要領に基づく内容となっている。最新の情報および詳細は「EdTech導入補助金」Webサイトで確認のこと。

 >>基調講演「『withコロナの学び方改革』とEdTech導入補助金」の録画映像(約1時間)はこちら

基調講演「『withコロナの学び方改革』とEdTech導入補助金」Q&A



Q1


 学校の先生と塾の先生は、なぜかお互いに仲の悪く協働できていない印象があります。お互いに授業の質向上のために交流を深めていくことがよりよい教育・授業になると思うのですが、民間教育と学校教育はどうすれば協働していけるのでしょうか?
→A.まず話すきっかけを作ることからではないでしょうか。市区町村の総合教育会議の場に塾関係者が出るとか、個々の学校レベルでもたとえば不登校児童・生徒への対応などの具体的テーマや、今後のGIGAスクール環境下での学びの個別最適化を実現するためとか理由をつけて話し始めることがだと思います。

Q2


 デジタル教材の活用で、この3か月の学習の遅れを取り戻すことができると思います。ただ、授業時数は教科ごとに法律で定められているはず。これを柔軟な運用にしていく必要があると思いますが、どう思われますか? これこそが、カリキュラムマネジメントだと思いますが、いかがでしょうか?
→A.経済産業省のみならず文部科学省も「個別最適化」を言い始めたからには、標準授業時数の柔軟な運用は文部科学省が真剣に考えるべきことです。ただ、今でも学校現場でやれるだけのカリキュラムマネジメントの工夫が最大限なされてはいないはずです。法律を読んで、解釈の限界までやっていただくのが第一歩かと思います。

Q3


 学校の外のTA(Teaching Assistant)と、学校との契約関係はどのようなものになっていくのでしょうか。産業界で働いている人間が、探求学習にTAとして参加する契約形態もあり得るということでしょうか。
→A.学校との民法上の契約関係は定かではありませんが、非常勤職員の雇用に関することは教育委員会にお問い合わせください。ただ、十分にありうるし、必要だと思います。

Q4


 ハード面は文科省、ソフト面は経産省で今は動いているというお話でしたが、1人1台端末のハードの整備が完了した後は経産省と文科省はどういう役割で協働していくのでしょうか?
→A.ハードの更新について、文部科学省は考えねばならなくなります。また、経産省はこれまでと同様、常に一歩先を歩き続けたいと思います。私たちが「1人1台」を強く言い始めて実際に実現したように、文科省が言い出せないところを思い切って言って引っ張るところに役割があります。次の一手を考えていきたいと思います。

Q5


 補助金の期間が終わった後は学校負担になりますか?
→A.国の予算は単年度が原則ですので、事業終了後の費用は補助できません。翌年度以降の経費については、学校等設置者や学校等教育機関で負担いただくことも視野に、各事業者とご相談いただければと思います。

Q6


 事業者として、EdTech事業への登録方法、採用要件を教えて頂けると幸いです。
→A.EdTech導入補助金への申請方法・要件については、Webサイトに掲載されている公募要領をご確認ください。

Q7


 45分×30コマから脱却するために、STEAMの時間割を実際に組んだときに、文科省が認可するからそれを進めてくれという、背中を押す通知が文科省から出ないでしょうか。
→A.そういう通知をぜひ出してほしいと、昔から文部科学省に言い続けています。実現を期待していますし、経産省としては一層、働きかけていきます。

Q8


 公立の小中学校でも、学校単位で導入補助金事業者の選定についての決定はできるものでしょうか?
→A.EdTech導入補助金への申請に際しては、学校等設置者の同意が必要になります。

Q9


 時間割は、その計画書や時数報告のシステム(文科省に報告するもの)に簡易さがないのがボトルネックになっていると思います。改善は見込めるでしょうか。
→A.所詮は人間の作った制度ですから、いくらでも改善は可能です。やる気になれば大概のことはできるはずです。

Q10


 地域差もあるとは思いますが、分散登校は始めただけで、徐々に通常登校が再開されていっています。すると、お話しされていた大前提の分散登校が継続され、少人数指導、場所を選ばない学びというのが崩れるのではありませんか?
→A.そのとおりだと思います。ただ、1つでも2つでも事例が生まれたらいいと思いますし、第2波・第3波の時に向けて準備を怠るべきではないと思います。のど元過ぎれば、が一番危険です。

Q11


 大学生が活動主体のNPO法人も、EdTech導入補助金の予算の対象に含まれますでしょうか?
→A.NPO法人であっても対象になり得ますが、詳細は公募要領の補助対象事業者の要件に合致するかどうかをご確認ください。

Q12


  GIGAスクール構想での端末整備待ちで、1人1台の要件をまだ満たさない場合でも(年度内に学校現場で実用可能の場合)、教委や学校などの立場でのEdTech補助金の申請は可能でしょうか?
→A.EdTech導入補助金において、1人1台端末の環境が整っていることは必須要件ではありませんが、定められた事業期間に実施できる内容の申請であることが必要です。

Q13


 教育委員会の承認は必要ですか? 学校長のみで大丈夫でしょうか?
→A.学校等設置者が教育委員会の場合、教育委員会の同意が必要です。

Q14


 EdTech補助金ですが、この2か月の授業補填に力を注ぎたいなどを原因に、当初導入予定をされていた自治体でも導入見合わせ検討をしていたり、新規に検討することに尻込みをする自治体が少なくないと聞いています。先ほどの講演にもあったのですが、逆にこの補填のためにもさらに家庭学習に力を注がなければならないと思いました。もし可能であれば、(おっしゃるとおり第1次の反響、分析が必要ですが、)第2弾を設ける、または導入期間終了後は自治体への運営補助の検討など、この2か月間だけが「ICTが魔法的に進んだね、懐かしいね」に留まることなく、今後も着実に進んでいくようになればとても素敵だと思います。浅野様はどのようにお考えで、今後どうあるべきだと思っていらっしゃいますか。よろしくお願いします。
→A.この2か月の授業補填を無理なくやる、第2波・第3波に備えるためにEdTechを使うべきだと思うのですが、なかなかご理解はいただけていません。全国で「従来型礼賛」のバックラッシュが始まっています。私たち経済産業省が「1人1台」を公に提唱したのが2年前、政府としてGIGAスクール構想が固まったのが半年前。ここまではとんとん拍子です。しかし、そう簡単ではありません。一気にいけないからと言ってへこたれても仕方ありません。学校の先生たちは、生徒たちの変容を見ると喜んでその道具を使い始めます。そういう皆さんの心に火が付くチャンスがこれからもたくさんやってくるはずですし、そういうチャンスを作っていきたいです。

Q15


 公立の小中学校が申請するとした場合、学校から直接できるものなのでしょうか? 正直いって、教育委員会が間に入ることで、理解が得られるまでに時間がかかることは少なくありません。
→A.本補助金では、学校等設置者の同意を必須の要件としております。ご了承ください。

Q16


 補助金の枠を超えた費用については、学校様負担でなく事業者負担が原則でしょうか。
→A.補助対象経費については、国と事業者が負担するため、学校等設置者・学校等教育機関の負担は発生しません。補助対象外経費の負担については各事業者とご相談ください。

Q17


 補助金の対象がソフトウェアだけとのことですが、遠隔で使えるプログラミング教育(ハードあり)は対象外になりますでしょうか?
→A.ハード部分とソフト部分の切り分けができるものであれば、そのハード部分を除いて、補助対象となる可能性があります。詳細は公募要領をご確認ください。

Q18


 自治体によって、財政に余裕のある自治体と余裕のない自治体があるが、財政に余裕のない自治体を優先で補助してもらえたらありがたいが。今後、そういった配慮は考えられるか?
→A.その財政力格差は、地方交付税交付金では埋めていると思っています。また、GIGAスクールの更新は、財政力には必ずしも左右されず、今までの親が支出している教材費や通学用品費や学年費の見直しだけで十分できます。その見直しをぜひ進めていただけましたら。

Q19


 個々の学校では、EdTech事業者のサービス導入に関する決定権がないと思いますが、導入を促進するための知恵などありましたらご教示ください。
→A.決定権は学校の校長と、担任団にあるはずです。もちろんEdTech補助金では学校設置者に同意は必要としていますが。

Q20


 こういう夢や希望があることにチャレンジする先生がこれまで多くなかったのは、何が壁なんだと考えてらっしゃいますか。
→A.それだけいろんなことで大変でいらしたのかと思います。チャレンジしようと思ったときから、チャレンジは始まります。みんなで渡れば怖くはありません。

Q21


 Edtech補助金で実証したあと、継続利用したときの国からの補助はありそうですか?
→A.国の予算は単年度が原則ですので、事業終了後の費用は補助できません。翌年度以降の経費については、学校等設置者や学校等教育機関で負担いただくことも視野に、各事業者とご相談いただければと思います。

Q22


 家庭や学校のネット環境の差どうにかできないでしょうか? 基本的に家庭や学校のネット環境、教師用PCのハードがソフトウエアに対応できていない。オンライン授業の推進やGIGAスクール構想は、たとえば明治時代のまだ水道設備が行き届いていない学校や地域に、石鹸配って手洗いを推進しているような、そんな状態と似ている。まずは学校、家庭の通信環境の整備である。
→A.GIGAスクール予算で、そこをしっかり埋めます。その後数年の間に、自治体予算や親負担の教材費・通学用品費・学年費などの支出の中身をよくPTAとの間で協議いただければ問題は解決されるはずです。

Q23


 海外の日本人補習校をサポートしています。在外の日本人補習校が、このエドテック導入補助金の仕組みを使うことはできますでしょうか。
→A.公募要領2-1-1で導入実証を行う現場となる学校等教育機関を定義しております。そちらに当てはまるかどうかをご確認ください。

Q24


 公立学校がその学校独自に、自由に動くのはかなり難しいように感じます。独自に動いたとしても、市教委や県教委からの承認がおりるまでにかなり時間がかかります。学校と企業等をつなぐ専門の外部のコーディネーターがいるといいなと思います。
→A.ご意見承りました。今後の政策立案の参考とさせていただきます。

Q25


 学びの方法が変わると考えてよいのでしょうか?
→A.大きく変わります。主体的・対話的で深い学びへと。

Q26


 純粋な職業人と学校の先生は文化が違いすぎるので、ある程度職業人が事前に勉強できる何かについて事業化をお考えいただけるとありがたいです。
→A.ご意見承りました。今後の政策立案の参考とさせていただきます。

Q27


 GIGAスクール構想と中小のテレワーク導入で安価な端末がショートしているという話がありますが(そのために上位機種を購入せざるを得ない)、本当ですか?
→A.多少時間はかかるはずですが、需要に応じて生産は追いつきます。

Q28


 幼児教育へのEdTech補助金導入についての検討は、今のところはないものでしょうか?
→A.現在のところはご用意できていませんが、今後検討してまいります。

Q29


 今まで45分、50分標準授業時数に縛られていた気がします。授業時数の確保という理由で行事の精選が行われてきました。目的と手段が入れ替わってしまったのですね。
→A.学校のさまざまな慣習の多くは、法規には基づかない完全な「慣習」が多いです。目的と手段との関係を見直し、最適解を合議していくことが必要ですね。

Q30


 AI教材がひとりひとりに合わせた学びによりインプットの時間を削減できること、そして、ICTとの相性が良い一方で、文科省はAI教材導入については、モデル校で成果がでながらも、現在は導入を見合わせています。見解をお知らせください。
→A.経済産業省の実証事業の成果については、文部科学省は十分認識していて、今後の扱いを考えていくはずです。

Q31


 各種申請書(申請書、効果報告書など)の公開はいつ頃でしょうか。また、効果報告では具体的にどのような報告(定量、定性)を想定されておりますでしょうか。
→A.申請は補助金Webサイトの申請フォームから入力いただきます。効果報告の詳細につきましては、補助金Webサイト・公募要領をご確認ください。

Q32


 サイトの資料を熟読できていなくて申し訳ありません。「EdTechソフトウエアサービス」と記載されていますが、IoT体験を提供しようとするとソフトウエアだけでなくハードウエアが必要となります。これは補助金の対象外となりますでしょうか?
→A.ハードウェアは対象外です。

Q33


 特別支援学校も申請できますか?
→A.特別支援学校も、導入実証の現場となる学校等教育機関に該当します。申請はEdTech事業者が行うものですので、導入したいソフトウェア・サービスを取り扱う事業者にご相談ください。

Q34


 支援員導入のための補助は例えば東京都では1年に限っています。長期的に支援するべきではないでしょうか。
→A.国の予算は単年度が原則となっています。

Q35


 不登校のお話をされましたが、学校外に設置された不登校教室や院内学級(病院内教室)は文科省の補助対象外になっていると聞いております。今後のインフラ整備の範囲の見直しに期待します。
→A.経済産業省はそういったものを重視します。文部科学省もぜひ考え直していただきたいですね。

Q36


 浅野さんのお話を聞いていると、このコロナの状況を前向きにとらえられることができました。今までの学校の慣習を変えるのきっかけとになればと思います。
→A.ピンチをチャンスにすると社会も個人もどんどん強くなれます。がんばりましょう。

Q37


 学校でPCやiPadを導入する際に、学校側でガチガチに権限を奪われて、家庭でアプリをインストールできないなど、有益に使えていない現状もあります。リコーダーや習字セット同じように、原則各家庭での持ち物としての配備を望みます。
→A.ルールをしっかり作っていくことが必要ですね。思い込み、前例踏襲、いろんな障害を乗り越えていく数年間になるでしょう。

Q38


 教員のITリテラシーの不足が理由でEdTech導入が思うようなスピードで進まない、という課題はすでに一定程度認められていると思います。教員の育成状況について、今回のEdTech補助金を活用しての実施が期待されるところですが、直近で認識されている現状や、今後の強化の方向性についてお伺いできたら幸いです。
→A.教員の皆さんは、使っているうちに習熟されるはずですが、教員養成課程は抜本的に見直す必要があると思います。これから、コーチングスキルが一層重要になる中では特にいえるはずです。

Q39


 怒られない程度やっておけばいいと考えている、動かない校長、教育委員会を動かすにはどうすればいいとお考えですか?
→A.子どもたちの利益を前面に出して説得する、親の圧力を活用する、さまざまなやり方に手を尽くされること、手柄をその人たちにあげる、しかないと思います。

Q40


 知的障害の子が生きにくい状況にならないかということについて、ひと言いただけないでしょうか。
→A.今よりはいい世界が待っていると思います。1人1人の認知特性を尊重して学ぶということが世の中の当たり前になるならば、一層のインクルーシブ環境になるはずです。

Q41


 質の管理というのでは到達テストの導入、留年など質を担保する仕組みが必要なのでは?
→A.EdTechを使えば、到達度を測るテストは日々の学習の中で可能でしょうし、おそらく留年せずともみな十分に教育課程を終えられるのではないでしょうか。

Q42


 デジタル教科書はEdTech対象? 採択教科書なのにデジタルになると高い。
→A.デジタル教科書は対象外です。

Q43


 EdTech事業者が、サポートに関して外注した費用については対象外ですか?
→A.公募要領で定める補助対象経費に該当する外注費については、対象となります。

Q44


 保護者の心配事としては、子どもが通う公立小学校ならびに管轄する区教育委員会の導入判断が遅れることにより、EdTechによる新しい学びを受けられない(新しい学びの格差)ことがきわめて心配です。親としては自らEdTechによる新しい学びを与えていますが、区ならびに学校長の英断に期待するばかりです。
→A.地域における民主主義そのものです。私もアメリカ留学時代に各州でのさまざまなコミュニティスクールの姿を目にする機会がありました。教育をどうするかは地域の民主主義の一大テーマですし、そもそも民主主義を担う人を育てるという意味で根幹が教育です。住民として、積極的な参画をご期待します。

 以上、44の質問に回答いただいた。最新の情報および詳細は「EdTech導入補助金」Webサイト等を確認のこと。
《編集部》

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