学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第142回のテーマは「暑さ指数(WBGT)を基準に体育や部活の実施を判断してほしい」。
学校における熱中症事故は毎年約5,000件発生
2023年7月28日に山形県米沢市で下校中の中学生が熱中症と見られる症状で倒れているのが発見され、その後、死亡が確認されたという痛ましい事故がありました。この事故だけでなく、学校が関係する熱中症に関する事故は残念ながら毎年起こっています。文科省の統計では、学校における熱中症事故は毎年5,000件程度発生しているとされています。2010年や2018年には熱中症での死亡者が1,500人(学校ではなく、社会全体として)を超えるような年もありました。今後も日本では暑くなることが予想され、その対応が必要とされます。
環境省の熱中症予防情報サイトには「暑さ指数(WBGT)について」という項目があり、詳しい説明がされています。「暑さ指数とは?」「暑さ指数はなぜ有効なのか?」「暑さ指数の詳しい説明」「当サイトで提供する暑さ指数について」「生活の場と暑さ指数」「暑さ指数について学ぼう」という6項目に渡り、さまざまな角度から説明がされています。
ルールだけでなく運用が重要
実際の学校現場でも、基準が定められ、多くの学校ではそれに則った取組みが行われています。しかし、問題となるのは実際の「運用」の部分です。今回の「暑さ指数」のことだけではありませんが、ルールとして決められていても、それが守られているか、いないかということは大切なことです。ルールが定められていたとしても、それが守られていないような状況では、ルールが無い状況と似たようなものです。
また、ルールとして決められていたとしても、そのルールだけでなく、関連する部分の運用がどうであるのかということも重要になります。基準が適切に運用されているのかということだけでなく、学校の行き帰りのことなどが考慮されていない場合があることなどです。実際、米沢の事故は部活が終わった下校中に起こったものでした。登下校は学校の教職員の関わりが難しいものです。度々、この連載でも書いていますが、登下校の管理責任は学校以外にあるとされています。今回はテーマではないので詳しくは書きませんが、基本的には保護者に責任があり、道路の安全などは警察や自治体などが関係してきます。
たとえば、暑さ指数の基準に従って、部活を中止にしたとします。「部活は中止なので、気を付けて下校しなさい」とただ伝えるだけでは十分ではないのだと思います。熱中症などはその前兆などもあります。下校時の子供のようす(顔色など)を確認し、状況によっては何らかの対応をしていくことなどが求められます。子供のようすに不安があるような場合は、保健室などで休ませることや親を呼ぶことなどが考えられるでしょう。基準の数値を守るだけでなく、そこに関連する対応も含めて考えていくことが重要になるでしょう。
熱中症の事故などは、繰り返し起こっています。似たような事故が起こることから「コピペ事故」などと呼ばれています。悲しむ人が出ないよう教職員はしっかりと過去の事例から学んでいくことが大切なのだと思います。
本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。
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