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【相談対応Q&A】学校便りをLINEで送ってほしい

 今回は「子どもが学校からのお便りを出しそびれるから、メールやLINEで送ってほしい」。クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、対応する際のポイントを聞いた。

事例 ICT活用
 学校に寄せられるさまざまな相談。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第24回は「子どもが学校からのお便りを出しそびれるから、メールやLINEで送ってほしい」

学校にもオンライン化の波


 私がホームページを閲覧した神奈川県の公立小学校では、欠席や遅刻の連絡がオンラインでできるような仕組みになっていました。これまで、欠席などの連絡は連絡帳か電話ですることが多かったです。連絡帳の場合、保護者としては渡す人にお願いする手間がありました。また電話の場合、朝の時間、学校では人手も、電話回線も、その対応に苦労する場合がありました。オンラインでの仕組みができることによって、保護者にとっても学校にとっても便利になったのだと思います。

 このように学校に関する取組みはどんどんオンライン化が進んでいくと思われます。そういったものの1つに「学校配布物」があります。学校から配られるプリントなどをメールやLINEで送るというものです。

 先ほどのオンラインでの欠席連絡同様、こういったことを学校全体で取り組んでいくと良いと思います。すでに学校から配布物(学校便り、学年便りなど)を学校のホームページに掲載し、公開している学校は多くあります。ただ、紙による配布を無くしてしまっている学校はまだ少ないようです。

 公立学校は「すべての人が可能である」ことでないと、取り組まないという傾向があります。公教育においては「平等」が大事であるという考え方からです。そういったことで、さまざまなものが進んでいかないという現実があります。会議などで「できない人がいるのにその人のことはどうするのですか?」というような意見によって、その企画が通らなくなうようなケースです。これでは、学校だけが世の中から遅れていってしまいますし、実際、かなりの部分で遅れていると私は感じています。

 99%に問題なく、1%に何らかの問題がある場合、その1%に対し、丁寧に対応することで可能になります。今回の例では、99%の人がメールでの受信が可能で、1%が何らかの要因でメールでの受信が不可能だとします。そういった場合、その1%の人に対しての関わり方(紙に印刷したものを配布するなど)を考え、実行していくことで、解決していくはずです。その1%の人を大切にするあまり、残りの99%の人の利益、利便を損ねるようなことはできるだけ避けていくべきです。

 今後、紙による印刷物を減らすことは、さまざまなメリットがあります。紙の使用を減らすことは、その原料である木材の伐採を減らすことにもつながります。環境面でのメリットがあります。また、業務の軽減にもつながります。教員の働き方が問題になっています。こういった業務改善の積み重ねが大切でしょう。

配付物のオンラン化、注意点は…


 今回の配布物のオンライン化に関して、注意することがあります。それは対応を「学校全体」とするようにし、個人として対応はすべきではないということです。これは、教員のプライバシーの問題とも関わってきます。

 たとえば、一部の保護者とのみメールやLINEで関わることは不公平感が出ます。また、クラスの保護者のLINEグループに担任も加わることも、色々な問題が生じる可能性があります。保護者としては、担任と気軽に関わることができるので良いのですが、その気軽さが却って問題になります。深夜に保護者からLINEやメールが来るようになったり、個人的な内容のものが来るようになったりということです。これは若い教員が陥りがちなトラブルです。注意が必要です。配布物のオンライン化などにおいては、メールアドレスは学校のものを使うことなど、きちんと公私を分けていくことが大切でしょう。

【シリーズ名変更のお知らせ】「クレーム対応Q&A」シリーズにおきまして、長期連載する中で、クレームではない保護者からの相談についても、このシリーズ内でご紹介してまいりました。特に悩みを抱える保護者からの相談につきまして「クレーム」という表現は相応しくなく、シリーズ名を「クレーム対応Q&A」「相談対応Q&A」と分けることにいたしました。ご意見をいただいた読者の方に感謝申し上げるとともに、ご不快に思われた方々にお詫びを申し上げます。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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