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専門職大学院のリカレント教育…調査報告書を公表

 文部科学省は2024年4月24日、「専門職大学院におけるリカレント教育・リスキリングの現状・課題に関する調査研究」報告書を公表した。専門職大学院の各専攻、社会人学生、企業に対する調査結果をもとにリカレント教育やリスキリングの実態、成果や課題などをまとめている。

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カリキュラムの有用性
  • カリキュラムの有用性
  • 知識・スキルに対するニーズ
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 文部科学省は2024年4月24日、「専門職大学院におけるリカレント教育・リスキリングの現状・課題に関する調査研究」報告書を公表した。専門職大学院の各専攻、社会人学生、企業に対する調査結果をもとにリカレント教育やリスキリングの実態、成果や課題などをまとめている。

 報告書は、文部科学省の大学改革推進委託費による委託業務としてリベルタス・コンサルティングが実施した2023年度(令和5年度)先導的大学改革推進委託事業「専門職大学院におけるリカレント教育・リスキリングの現状・課題に関する調査研究」の成果を取りまとめたもの。「調査概要」「専門職大学院調査」「社会人学生調査」「企業調査」「まとめ」の5章で構成している。

 実施した調査は、「専門職大学院調査」「社会人学生調査」「企業調査」の3種類。2023年9~10月、専門職大学院(法科大学院と教職大学院を除く)の各専攻、専門職大学院に在学中の社会人学生と修了生(在学当時社会人であった者)、社会人学生と修了生の所属先企業に対し、アンケート調査とヒアリング調査を実施した。

 調査結果によると、専門職大学院(法科大学院と教職大学院を除く)に通う学生の7割弱が社会人で、リカレント教育の手段として活用されている。年齢は20代後半から60歳以上までと幅広く、ボリュームゾーンは40代。所属先企業の役職は、一般社員・職員と課長・部長級にあたる学生が多い。

 企業派遣の学生はこのうち1割程度で、大半は自己の選択で通学。学生の6割は所属先企業から支援や配慮を受けておらず、学費の全額負担を受けているのは約15%、一部負担を受けているのは約5%にとどまっている。

 専門職大学院で習得が期待される知識・スキルについては、8割以上の学生・修了生が「身に付けることができている」と回答。修了生の約半数は、専門職大学院での学びを経て、「より難易度の高い業務に取り組めるようになった」と回答しており、専門職大学院の学習が実務にも生かされていることがわかった。

 調査の選択肢は、比較分析が可能な設計となっており、調査間で比較分析した結果も示している。カリキュラムの有用性については、実践性を重視したカリキュラムである「応用・実践問題の研究・学習に重点を置いた内容」が専攻87.5%、学生・修了生33.3%、「座学のみならず、実習等実践的な講義を重視した内容」が専攻73.8%、学生・修了生23.3%。専攻の重視度に対して学生・修了生の有用性は高くなく、「専攻が提供する教育内容と実際のニーズの間には乖離が存在する」と分析している。

 知識・スキルに対するニーズでは、「業務に直接役立つ専門的・先端的・高度な知識・スキル」は専攻の重視度も学生・企業のニーズも高く、「ニーズを満たす教育が提供できていると考えられる」と指摘。一方、「分野・業界の関連する実践的な知識、スキル」については、専攻からみた重視度に対して学生と企業のニーズはそこまで高くなく、カリキュラム内容と同様に「実践性」という点で専攻が提供する教育内容と実際のニーズの間には乖離が存在するとしている。

 学習環境に対するニーズについては、「オンラインで履修可能な授業」のニーズは学生・企業ともに高く、専攻の実施率も比較的高いが、「学生・企業のニーズの高さと比べると十分でないともいえる」と分析。「社会人学生が仕事と学習の両立に課題を感じていることを踏まえると、さらに実施率を高めて、より履修しやすい環境を作っていく必要があると考えられる」と提言している。

 「入学しやすい学費の設定」は、学生・企業双方のニーズが高い一方、専攻の実施率は低い。「学習費用がかかる」ことは学生の約半数が課題としてあげ、所属先企業も約3割が「学習費用の負担等により、経費がかかる」ことを課題と感じているのに対し、専門職大学院で取組みが行われている割合は低いことがわかった。「独自の奨学金制度の設置」も学生のニーズを専攻の実施率が下回っている実態にあった。

 報告書は、文部科学省Webサイトで公開している。

《奥山直美》

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