大学院段階の「授業料後払い」の仕組みについて、文部科学省は2022年12月23日、報告書を公表した。新制度創設に向けて、対象者の年収要件、卒業後の納付額等、制度設計の方向性を示しており、2024年秋入学からの開始を目指す。
授業料後払いは、在学中は授業料を徴収せず、卒業後の所得に応じて柔軟に納付する制度。「経済財政運営と改革の基本方針2022」で創設することとされ、教育未来創造会議第一次提言工程表で2024年度(令和6年度)に実施するとされた。これを受け、文部科学省は「大学院段階の学生支援のための新たな制度に関する検討会議」を設置。今回、同検討会議が制度設計の方向性等を報告書に取りまとめた。
「授業料後払い」制度の対象者は、修士段階の大学生。本人の収入等に基づいて、入学前から直後にかけて一定の事前審査を経て対象者を決定する。年収要件は、現行の修士段階の貸与型奨学金の基準である「親からの仕送り等を含めた本人の収入が年299万円(研究能力が特に優れている者等は389万円)以下」をベースに財源等を勘案して今後政府部内で検討するとしている。
在学中の授業料を不徴収とする方法は、授業料相当額を政府が肩代わりし、日本学生支援機構(JASSO)から大学院に年1回または複数回支払う。卒業後は、利用者が所得に応じて無利子でJASSOに納付(返還)する。
納付月額は、「所得に応じた無理のない納付額」「納付が長期化しすぎない」「将来世代の授業料支援の原資を確保する」という観点から、前年の年収から、税や社会保険料等を控除した所得の9%を12等分した額とする。ただし、一定年収を下回る場合は月額2,000円等、一定の最低納付額を設定する。報告書では、「一定年収」の額について、「たとえば単身世帯で年収300万円等」と例にあげている。
納付の始期は、卒業後半年経過後とし、納付の終期は納付総額が授業料分の額に達したときとする。ただし、博士後期課程に直接進んだ場合等、在学中は在学猶予の利用が可能。納付方法については、英国や豪州では税当局による源泉徴収方式が採用されているが、新たな「授業料後払い」は希望者が利用する制度であることや2024年度から速やかに実施する観点から、JASSOによる口座振替方式とする。
卒業時等の支援が終了する段階で業績優秀者と認められる者への優遇措置については、「全部または一部納付を免除する優遇措置の対象とすることが適当である」と記載。納付が困難となった場合の扱いについては、「保証の要否および適切な在り方について、財源および利用者が卒業後に債務不履行等に陥るリスク等を勘案しつつ、政府部内で検討する」としている。
制度開始時期は、JASSOや各大学の実務的な準備、学生・社会人への周知等に最低でも1年は必要とし、事前審査の必要性もあわせて考慮すると、2024年秋入学からが適当とした。