教育業界ニュース

【ES2020】社会で生き抜く力をどう育てるか…工藤勇一校長ら3名が語る

 教育イノベーション協議会主催のEdTechグローバルカンファレンスイベント「Edvation x Summit 2020 Online」で2020年11月4日に行われたプログラム「社会と乖離した学校、子どもたちはいかに社会とつながるか」のもようをお届けする。

事例 企業×学校
プログラム「社会と乖離した学校、子どもたちはいかに社会とつながるか」
  • プログラム「社会と乖離した学校、子どもたちはいかに社会とつながるか」
  • 「学校教育の目的」横浜創英中学・高等学校 工藤勇一校長
  • OECD Learning Framework 2030
  • 第一学院高等学校「成長実感型」教育
  • 日本の教育の1つの課題
  • 独自の意欲喚起教育を構築
  • 「誰もが夢を追える世界へ」NowDo取締役副社長/COO 鈴木良介氏
 教育イノベーション協議会主催のEdTechグローバルカンファレンスイベント「Edvation x Summit 2020 Online」が2020年11月3日から5日の3日間、オンラインで開催された。2日目の11月4日に行われたプログラム「社会と乖離した学校、子どもたちはいかに社会とつながるか」のもようをお届けする。

 「テクノロジーを活用して子どもたちと社会をつなぐ」をテーマに、公立学校、私立学校、通信制学校、民間オンラインスクールとさまざまなスタイルの学校を運営する立場から講演。横浜創英中学・高等学校の工藤勇一校長、ウィザス 取締役第2教育本部長で第一学院高等学校副理事長の竹下淳司氏、NowDo取締役副社長/COOの鈴木良介氏の3名が登壇した。

横浜創英中学・高等学校 工藤勇一校長



 2020年3月までは千代田区立麹町中学校の校長を務め、2020年4月に横浜創英中学・高等学校の校長に就任した。工藤校長は「学校が社会とずれているとよく言われるが、学校だけでなく企業も社会が目指す方向とずれているのではないか」と疑問を呈し、その原因は「学校教育にある」と警鐘を鳴らす。今回はその視点で話を展開する。

社会に対する当事者意識を失っている



 日本財団が2019年11月に発表した18歳意識調査「国や社会に対する意識」(9か国調査)によると、「自分を大人だと思う」「自分は責任がある社会の一員だと思う」「将来の夢をもっている」「自分で国や社会を変えられると思う」などの項目について、日本は9か国中で最下位だった。これは、日本の子どもたちが「社会に対する当事者意識を失っている」ことの現れだと指摘。「これは高校生の姿というよりも、大人社会を象徴しているのではないか」と工藤校長は問題提起する。

 「学校が社会とずれている」というレベルの話ではなく、学校教育の目的は、それぞれの子どもたちが「社会の中でよりよく生きていく」だけではなく、「よりよい社会がつくられる」ための学校でなくてはならない。このことを日本の社会は忘れているのではないか。

 OECD(経済協力開発機構)が示す教育目標「OECD Learning Framework 2030」では「個人の幸せと社会の幸せを実現する」を掲げている。ここにあえて「自律」「尊重」「創造」と入れたのは、麹町中学校の教育目標を重ねて、世の中は当事者意識をもって、それぞれ起こっている課題について対話をしながら合意していくことがもっとも大事な時代になったからだという。「このようなことを意識せねば教育は成り立たない」と工藤校長は断言する。
OECD Learning Framework 2030

ウィザス取締役第2教育本部長・第一学院高等学校 副理事長 竹下淳司氏



 第一高等学院のこれまでの教育活動の実績が認められ、株式会社が学校を運営するという新たなタイプの学校として、構造改革特別区域法を活用し、茨城県高萩市に広域通信・単位制高校「ウィザス高等学校」を2005年に開校。2008年には兵庫県養父市に2校目となる「ウィザス ナビ高等学校」を開校した。第一学院は創業以来、生徒ひとりひとりの成長を願い、「1/1の教育」という教育理念を掲げる。学校は単に卒業するだけでなく、社会で活躍できる人づくりを実現できる最高の教育機関を目指している。

 第一学院で今もっとも力を入れているのが「成長実感型教育」。どんな生徒にも可能性があるが、その可能性を見出すためには、低くなってしまった自己肯定感をリセットし、意欲喚起教育に力を入れるのが重要だと考えている。また、コミュニティ教育や、1人1台のタブレット端末によるオンライン教育も展開している。

日本の教育の課題のひとつ「不登校や中退者の数が多い」



 日本の教育の課題のひとつとして、不登校や中退者の数が多いことがあげられる。令和元年度(2019年度)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査によると、不登校の小学生は前年度比8千人増の5万3千人、不登校の中学生は前年度比9千人増の12万8千人と、小中学生に関しては年々増加している。一方、高校生は不登校が前年度比2千人減の5万人、中退者が前年度比5千人減の4万3千人と減少しているものの、義務教育を卒業しても高校の学びについていけない生徒がいる。

独自の意欲喚起教育を構築



 ウィザスは創業して45年経つ。当初、入学した高校になじめなかった高校中退者向けに大検制度を使って進学を目指す予備校を運営していた。その後、時代の変化に合わせて多様な学びができる通信制高校「第一学院高等学校」を開校した。開校以来、生徒たちを見てきて、単に卒業・進学しただけでは社会に適用していくのが難しく、特に社会関係資本(人対人、人対社会)を構築する力を養う必要性を感じ、独自の意欲喚起教育「プラスサイクル指導」を構築した。現状の学校では、関わる大人が教員と保護者に限られてしまい、これだけでは社会との関係づくりや多様な人間関係を作るには非常に狭いため、地域全体を学校ととらえて地域全体を学校とした「コミュニティ共育」をこの10数年進めている。また、ICTを活用して地域を越えた生徒同士のつながりや、地域の人々とのつながりを通じて、生徒を多様な視点で見てもらえることによって、気付きや学びを深めていけるという。

 第一学院では、より社会に開かれた学びを実現するため、生徒を主体に、先生は伴走役に徹しながら、生徒が接点の合う大人を探していくという機会を作っていく必要があると感じている。社会との接点をどんどん広げていかないと、環境変化の激しい時代に社会関係資本を作っていくのが難しいのではないかという考えのもとで取り組んでいる。
独自の意欲喚起教育を構築

NowDo取締役副社長/COO 鈴木良介氏



 鈴木氏は2010年からプロサッカー選手の本田圭佑氏とともに「サッカーを通して子どもたちに夢をもつことの大切さを伝えていく」というコンセプトでサッカースクールや海外プロクラブの運営、スポーツ施設運営などの事業を展開。教育をメインコンセプトに今まで多くの子どもたちに触れ合う中で、どうしても越えられない壁があり、2017年に本田氏とNowDoを設立した。同社は「誰もが夢を追える世界へ」というミッションを掲げ、スポーツと教育、ITの力を使ってオンラインで子どもたちにさまざまなことを伝えていくオンラインスクールを2020年7月に立ち上げた。オンラインスクール「NowDo」は社会で活躍しているさまざまな人の講義を配信したり、世界中の子どもたちがオンラインでつながったり、そこで立ち上がるプロジェクトを社会で実行していくようなサービスを提供している。

世界中の子どもたちへ平等に教育機会を与えられるようなプラットフォームを



 サッカー選手を目指してずっとサッカーをやってきた鈴木氏が、ケガでサッカー選手になれないとなったとき、サッカー選手以外に選んだ道が指導者しかなかった。それはサッカーしか知らなかったから指導者になったのだが、教える子どもたちの9割はサッカー選手になれずに社会へ出ていくのに、子どもたちにサッカーを通じてさまざまなことを教える立場の自分自身に社会に出た経験がなく、サッカーしか教えられないのは違和感があったという。そこで、鈴木氏は指導者を辞めてベンチャー企業に就職してビジネスを学び、本田圭佑氏と一緒にサッカースクールを立ち上げた。

 サッカースクールの指導者にはビジネススキルを身に付けさせているが、サッカーの指導者だけでは伝えきれない部分は、スポーツとITをつなげることによって、もっと多くのことを伝えられると感じ、オンラインスクール「NowDo」を立ち上げた。

 NowDoは海外にも拠点があるが、鈴木氏は「東南アジアやアフリカの多くの子どもたちは貧しく生きていくことで精いっぱいで、夢をもつ機会すらない子どもたちにも平等に教育機会を与えられるようなプラットフォームを作り、さまざまな学びを提供したい」と語る。オンラインならどこにいてもさまざまな人々とつながることができるので、子どもたちとさまざまな人々をつなぐことで、子どもたちが新しい選択肢や夢をもつことができると考え、取り組んでいるという。
「誰もが夢を追える世界へ」NowDo取締役副社長/COO 鈴木良介氏

 社会で生き抜く力を学校はどのようにして育てることができるのか。私立学校、通信制学校、民間オンラインスクールとさまざまな立場からの取組みが紹介された。子どもたちも社会の一員であり、当事者意識をもって社会と関われるような取組みが学校に求められているのではないだろうか。
《工藤めぐみ》

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top