東京都理学療法士協会は2023年6月9日、小学生向け漫画教材「わけがあってこちら側に止まっています~心のバリアフリー~」の無料提供を特設サイトで開始した。教員向けの指導者用資料もあわせて掲載している。
同協会のエスカレーターマナーアップ推進委員会では2015年より、エスカレーターの利用場面を切り口とした障害理解の活動やインクルーシブな社会に向けた活動に取り組んでいる。活動のきっかけは、「エスカレーターの右側に止まって乗りたい」という、障害を抱える、ある1人の患者の声だったという。
東京消防庁によると2020年度のエスカレーター事故は、東京都だけでも年間1,000人以上が緊急搬送され、特に踏段の途中での事故が多く6割にのぼる。エスカレーターでは、手すりにつかまり、立ち止まるのが安全な乗り方となるが、駅などでは歩く人のために片側をあけることがマナーになっている現状がある。一方、手足の障害などにより、左右どちらかにしか立てない人がいることはあまり知られていない。
同協会では、2022年に心のバリアフリーを学ぶ漫画作成に向け、プロジェクトチームを発足。障害を抱える人やその両親、小学生や学校の先生、理学療法士、デザイナー、漫画家など多くの人が参画し、単にエスカレーターに止まる・止まらないという答えを示すのではなく、どうしたら特徴の違う他者同士が気持ちよく社会の中で暮らせるかを考える想像力や共感力を育くむことを主眼に作成したという。
小学生向け漫画教材「わけがあってこちら側に止まっています~心のバリアフリー~」は、特設サイトで閲覧できる。このほかWebサイトでは、プロモーション動画「エスカレーター 止まって乗りたい人がいる」、インタビュー動画「エスカレーターに乗るときの気持ち。今、伝えたいこと。」などを公開。教員向けの指導者用資料も掲載している。