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【相談対応Q&A】運動不足なので学校で体を動かすようにしてほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第99回のテーマは「コロナの影響で運動不足なので学校でもっと体を動かすようにしてほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第99回のテーマは「コロナの影響で運動不足なので学校でもっと体を動かすようにしてほしい」。

コロナの影響で子供の体力低下

 2020年春に始まった新型コロナウイルスは日本の社会に大きな影響を与えています。もちろん、社会の一部である学校にもさまざまな影響を与えています。そういったものの1つが「子供の体力低下」です。

 毎年、日本中の学校で「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」が行われています。その調査によると2021年の結果は2019年と比べ(2020年は未実施)大幅に下がっていました。外遊びの減少等が原因として指摘されています。

取組に配慮を

 こういった状況から「学校で子供がもっと体を動かすようにしてほしい」という保護者からの相談を受けることがあります。身体が丈夫であることは、他のどんなことに取り組むにしても基本となることです。そういったこともあり、学校で子供が体を動かすような活動に取り組むことは賛成です。ただし、しっかりと配慮しながらでないと逆効果にもなりかねません

 たとえば、朝の時間(8:30~8:45等)に全校体育に取り組むには細心の注意が必要です。あまり深く考えず、全員で5分間走をしたとします。子供にとってはやらされ感が強く残り、運動嫌いにつながる可能性もあります。子供時代の運動経験に関する研究では、子供時代に運動で嫌な思いをした人は、大人になってからも運動に取り組まない傾向があるというものがあります。

 「全校体育」のように一斉に何かに取り組むというものよりも、それぞれの子供に焦点を当てるような取り組みが望ましいでしょう。たとえば、休み時間に校庭で子供が遊ぶことのできる道具を増やすこと等です。小学校では休み時間に遊びで使うことができるボールは各クラス1個または2個等と指定されていることが多いです。そういった形ではなく、体育倉庫にあるボールを自由に使うことができる形に変えるのです。遊びたいと思う子供が増える可能性があります。

 また、休み時間に体育館を開放するというものも同様です。体育館は、遊ぶスペースとして開放されていないことが多いです。体育館を遊び場所として開放することで遊ぶ子供が増える可能性があります。さらに、休み時間を5分または10分増やすということも良いでしょう。時程を変えていくことは学校全体で他の学校教育活動との関連も含めて検討が必要となります。他の時間を削ってでも、子供が体を動かして遊ぶ時間を確保することが重要であるという結論になったなら、休み時間を増やすという形にしていくと良いです。

 子供にとって学校の中で体を動かす時間はおもに「体育」と「休み時間」です。基本的には全員が受ける「体育」の授業の時間の質を高めていくことはもちろん大切です。それと同様に毎日一定時間ある「休み時間」において子供が体を動かすことができるような状況(環境)を作っていくことも大切です。上であげた「用具を増やす」「遊ぶ場所を増やす」「遊ぶ時間を増やす」等をその学校にあったやり方で実施していくことが良いでしょう。そういった状況になる事で、休み時間に体を動かす子供が増える可能性があります。

室内遊びに注目

 さらに注目したいものが「室内遊び」です。先行研究や私が取り組んだ研究では、伝承遊びの「お手玉」やニュースポーツの「スポーツスタッキング」が子供の脳に良い影響があったというものがあります。子供の成長に関する「スキャモンの発育曲線」では神経型に関しては8歳くらいまでに大部分が完成されるとされています。外で大きく体を動かして遊ぶことだけでなく、室内で手や指を使うような遊びも子供の発育には大きなプラスとなります。子供の体に良い子を多面的に取り組んでいくことが望まれます。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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