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私立高校の学費滞納率は過去最低、コロナ理由87人

 全国私教連は2021年11月29日、私立中高生の学費滞納と経済的理由による中退調査の結果を公表した。2021年度上半期に3か月以上学費を滞納した私立高校生の割合は0.5%で、過去最低となった。コロナ禍を理由とする私立高校の学費滞納生徒は87人だった。

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全国私立学校教職員組合連合
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  • 私立高校の学費滞納生徒数と経済的理由による中退生徒数の推移
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 全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)は2021年11月29日、私立中高生の学費滞納と経済的理由による中退調査の結果を公表した。2021年度上半期に3か月以上学費を滞納した私立高校生の割合は0.5%で、過去最低となった。コロナ禍を理由とする私立高校の学費滞納生徒は87人だった。

 「私立中高生の学費滞納と経済的理由による中退調査」は、国の就学支援金制度拡充とそれにともなう各自治体の減免制度変更の検証と、新型コロナウイルス感染症の学費負担への影響を滞納・中退の面から調べることが目的。調査対象期間は、2021年度上半期(4月~9月末)。全国私教連の加盟校のうち、34都道府県の私立高校347校、23都道府県の私立中学校170校から回答を得た。

 9月末時点で3か月以上の学費を滞納した生徒の割合は、私立高校が前年比0.02ポイント減の0.5%(1,432人)、私立中学校が前年度比0.01ポイント減の0.12%(85人)。いずれも1%を切り、1998年度の調査開始以来、過去最低を記録した。6か月以上学費を滞納した私立高校の生徒は409人、全調査生徒の0.14%で、生徒数、割合とも過去最低となった。一方、私立中学校における6か月以上学費滞納生徒は、前年度比6人増の35人であった。

 4月以降9月末までに経済的理由で中退した生徒は私立高校が10人(0.0035%)、私立中学校が5人(0.007%)。私立高校の割合は過去最低となり、私立中学校も低水準にとどまった。

 コロナ禍を理由とする私立高校の学費滞納生徒数は、14都道府県45校で87人。前年の12都道府県43校71人から微増。調査生徒に占める割合は、前年と同率の0.03%。滞納生徒における割合は6.07%で、前年の5.04%と比べて、コロナ禍を理由とする生徒の割合が微増している。

 コロナ禍の私立高校生の学費負担への影響については、「コロナ禍の影響で、学費滞納の家庭は増えた。収入が減少し、家計急変で補助金を申請した家庭もあった」(青森県)、「単身世帯を中心に困窮する家庭やコロナ禍の影響により家計が急変する家庭は増加傾向にある。その中でも『低所得世帯』に限りなく近い『中所得世帯』の教育費負担が問題となっている」(神奈川県)等、事例集に現れている。

 コロナ禍を理由とする私立中学校の学費滞納生徒数は、8都道府県14校で18人。調査生徒に占める割合は、私立高校と同じ0.03%。滞納生徒における割合は21.2%で、前年の21.0%よりも0.2ポイント上昇した。

 国の就学支援金は2020年4月から、年収590万円までの世帯の私立高校生に年額39万6,000円(月額3万3,000円)が給付されるようになった。全国私教連は、調査結果を受け「今年度になって、コロナ禍の影響が大きく出てくることが予想されたが、調査対象校、生徒数が増加したにもかかわらず、滞納率が昨年を下回る結果となったことは、2020年からの制度拡充が学費負担を軽減させた効果が大きかったことを示している」と分析。国の拡充に沿って独自制度を拡充した自治体も出て、年収700万円までの世帯を対象に補助制度がある自治体が23都府県と約半数になった影響も大きいと指摘している。

 その一方で、独自の減免制度がない自治体も存在。自治体の独自制度では対象を授業料に限る場合も多く、施設設備費の負担が20万円を超える自治体で滞納が多い実態にあるという。全国私教連では、国や自治体に制度の拡充等を求めている。
《奥山直美》

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