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iiscore-Uで大学入試業務をデジタル化、労力・コスト減を実現

 ODKソリューションズが提供する大学入試の評価入力・管理システム「iiscore-U(イースコアユー)」を導入した明星大学の岡部勇氏、大矢直樹氏、神保健太郎氏に、導入背景や活用メリットなどを聞いた。

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明星大学は2024年度入試から評価入力・管理システム「iiscore-U」を導入した
  • 明星大学は2024年度入試から評価入力・管理システム「iiscore-U」を導入した
  • iiscore-U採点画面(サンプル)
  • 明星大学 学苑・大学事務局の岡部氏
  • 明星大学 学苑・大学事務局の大矢氏
  • 明星大学 学苑・大学事務局の神保氏

 大学入試は近年、総合型・学校推薦型入試など選抜方式が増えて多様化している。こうした選抜では、調査書や面接、小論文などから合否判定する形式が多く、紙での書類管理は業務負担が大きくなるだけでなく、作業ミスや紛失のリスクも伴う。

 ODKソリューションズ(以下、ODK)は、面接やグループディスカッション、小論文、事前課題の採点準備から合否判定までの業務をWebサイト上で一元管理できる評価入力・管理システム「iiscore-U(イースコアユー)」を開発した。同サービスの開発に協力し、実際の入試業務で利用を開始した明星大学 学苑・大学事務局 アドミッション・就職ユニットリーダー補佐の岡部勇氏、アドミッションセンター長(チームリーダー)の大矢直樹氏、アドミッションセンター 課長補佐の神保健太郎氏に導入背景や活用メリットなどを聞いた。

ODKソリューションズ

入試業務の労力とコストの問題を解決したい

--明星大学の入試関連業務の流れとiiscore-Uを導入されるまでの背景を教えてください。

岡部氏:入試業務を担当するアドミッションセンターでは、学生募集グループが説明会やオープンキャンパスといった学生募集活動を、入学実施グループが入試から入学手続を、それぞれ協力しながら実施しています。おもなスケジュールは、12月ごろから高校1・2年生に向けたオープンキャンパスを随時開催し、出願が翌年9月から、各種選抜が10月から始まり、合否発表と入学手続を経て入学を迎えます。

大矢氏:2021年度までは面接試験をすべて紙の書類で行っており、面接官が手書きで評価用紙に点数を記入。その書類を職員が預かり、データに起こして合否の判定会議に向け再度紙の資料を用意していました。また、評価用紙に記入された点数を職員数人で電卓を使って計算し、確認するという作業も行っておりました。これらの業務については、以前から労力がかかり、コストも高いと感じており、何とかそこから脱したいという思いが電子化を検討したきっかけです。

 2022年度入試からは、外部のワークフローシステムを使って書類の電子化を進めました。パソコン上で一連の業務は進行できましたが、PDF化した出願書類は別の場所から開かなければならず、そもそも見づらいなどの課題があり、紙の書類も継続して使用していたため、抜本的なコストや人員の削減には至りませんでした。また独自のワークフローシステムだったので、初期設定や判定資料作成においても負担がかかるという課題も表面化しました。

 そんなときにODKさんからiiscore-Uのシステム開発について話を伺い、我々も開発協力をさせてもらいながら、入試業務のデジタル化を進めようと一緒に取り組み、本学では、2024年度入試からiiscore-Uでの運用を始めています。

-- iiscore-U導入時に重視したことを教えてください。

大矢氏:データを使って合否判定までの業務を一連で進められることを重視しました。iiscore-Uはデータのインポート・エクスポートを繰り返す必要がなく、データを入れて確定すれば、その日のうちに合否判定ができます。

iiscore-U採点画面(サンプル) 画像提供:ODKソリューションズ

 今回は開発段階から携わらせていただいているので、いくつか要望もお伝えしました。紙を電子化するときには、そのまま紙をWebのフォーマットに落とそうとしがちですが、「Webだからこそできる機能を作ってほしい」というオーダーに対し、たとえば面接官にとって重要な面接時間の経過を、画面に表示できる機能などを追加していただきました。

 開発に際して、自分たちの要望を率直にお伝えできたのは、以前からお世話になっているODKさんが我々の業務や面接の進め方などの知見をお持ちだったという部分が大きかったと思います。

出願から入試手続きまでシームレスに

--現在、iiscore-Uはどのように利用されているのでしょうか。

岡部氏:受験生のデータ反映までをODKさんに依頼しています。面接試験では、面接官がiiscore-Uの画面を開くだけで、面接資料の閲覧や本人確認ができ、面接実施後は評価を入力しています。また筆記試験の点数も取り込めるので、試験実施後に新たな判定資料を作成する必要もなく、入力されたデータをもとに合否判定を行います。その後、合否通知は「UCARO(ウカロ)※」を利用して実施しています。紙で管理する場合と比べて、業務効率が劇的に改善されました。

※『UCARO(ウカロ)』 大学受験ポータルサイト
 受験の各プロセスを一本化する日本初の大学横断型受験ポータルサイト。複数大学の出願・受験・合否の情報確認や、スケジュール管理ができるサービスを提供している。


神保氏:面接試験前には、面接官を務める教員が事前に面接資料を確認する期間を設けています。紙で運用していた時代は、出願書類をODKさんに取りまとめていただき、試験前に資料閲覧専用の部屋を一定期間設置し、教員にその部屋まで来てもらって閲覧してもらっていました。今は完全に電子化されているので、データをアップして確認期間を伝えれば、時間や場所の制約なく面接資料を確認できるようになりました。

大矢氏:今回、iiscore-Uの導入を検討した時期はコロナ禍で、教職員が大人数で集まれなくなり、人が触ったものに触れるのも抵抗がある状況が続いたことも、このシステムを推進していくうえで後押しとなりました。

--導入時に反対意見などはありましたか。

大矢氏:本学の場合、iiscore-U導入の前に独自のワークフローシステムを使っていたので、iiscore-U の導入時には反対意見はなかったように記憶しています。ワークフローシステムの導入時には、セキュリティや取扱方法について心配する声はありましたが、iiscore-Uはスムーズに導入できました。このように、iiscore-Uの導入は、ODKさんと学内(教職員)の理解と連携協力があったからこそ実現したものであると考えています。

岡部氏:iiscore-Uはマニュアルを作成して展開したので、職員にはそれほど抵抗はなかったと思います。教員には、事前に副学長や学部長から必ずテスト環境で試すように通知してもらいました。

--利用している職員・教員の方からの反応はいかがですか。

岡部氏:より良く使うために使い勝手ではいくつか意見もあるかもしれませんが、教員の協力もあり、入試当日は問題なく利用できました。今後は学内の意見も参考にしながら、今以上に操作性を良くすることに注力したいです。

--研修などは実施されましたか。

神保氏:教員には、ODKさんに作成いただいた採点入力のマニュアルを8月に展開して事前に操作方法を確認してもらいましたので研修は実施していません。職員にはマニュアルを展開したうえで、説明会と試験当日の面接の前に会場で実際に進め方の確認をしました。

岡部氏:ODKさんにテスト環境を作っていただいたのがとても助かりました。

ペーパーレスで業務の効率化が大きく進む

--ペーパーレスに関してどのくらいの効果がありましたか。

岡部氏:基本的には紙の面接資料や判定資料の用意がすべてなくなりました。年内入試は出願書類などまだ紙を使っている部分があるので、来年はそれも電子化したいと考えています。

神保氏:以前は、ODKさんに紙の判定資料を教員の人数分、納品いただき、その資料が入った大きな紙袋を両手に持って判定会議に臨んでいました。それがなくなったことは、コストや労力の面から考えても非常に大きな効果だと思います。

大矢氏:エントリーシートなどの面接書類は試験当日にすべて回収していて、不足がないかチェックしていました。iiscore-Uによって書類紛失の心配がなくなり、その分の労力も必要なくなりました。

 また、合格通知はUCAROで実施し、合格後の手続きの書類は郵送していました。郵送は一定の時間がかかり、遅延があると最終的には合格者のデメリットにつながります。デジタル化したことで、すべての合格者に同時に連絡できる手段を持てたことで大変便利になりました。

 これからは極力、印刷物をなくしていきたいと考えています。今は受験票も受験生に印刷して持ってきていただいており、ご自宅にプリンターがない場合はコンビニなどで印刷されていると思います。そういった点では受験生に苦労を課してしまっているので、ここまでデジタル化が進んだのであれば最後に紙に立ち戻らない仕組みにしたいです。ですので今後は、紙でなくとも本人確認ができる仕組みがあれば、ぜひ取り入れたいです。

--入試業務にかかる時間はどのくらい削減できましたか。

岡部氏:資料作成や印刷、準備などの時間がなくなったので、そこにかけていた時間は大幅に短縮されています。またUCAROとの連携で手作業がなくなり、連携作業の時間はかなり減少しています。

神保氏:以前は、面接資料の確認や回収したものを種類ごとに仕分けしていました。ODKさんに来ていただいて教員が記入した各受験生の評価用紙を入力してもらい、終わったものをまた仕分けするといった作業もありましたね。

大矢氏:そうですね。入試に関する一連の業務でODKさんを含めてたくさんの人が動いていました。記載ミスや判別不能な文字などがあると試験会場に行って面接を止めて面接官に直接聞くこともありました。iiscore-Uでは、面接を担当した教員がその場で評価を入力するので後からの確認も必要なくなりました。

 職員は本部にいるのでこれまでは面接の進捗状況はわかりませんでしたが、電子化されたことですべての面接の進捗をモニタリングできるので、その後の撤収作業の予定も立てやすくなりました。試験当日の業務終了時刻が圧倒的に早くなったのは間違いありません。しかし、まださらなる人的コストの削減が課題だと考えていますので、引き続き業務の効率化を進めていく予定です。

面接の進行も効率的に、想定外のメリットも

--入試にどのような変化がありましたか。

岡部氏:まずはペーパーレスになって、面接資料の紛失や間違いなどを起こすリスクがなくなりました。また、UCAROとの連携による入試業務の負担軽減は非常に大きいと思います。受験生にはまだ直接的なメリットはあまりないですが、大学側の業務が効率化されると時間短縮などの面で今後は受験生にも良い影響を与えられると思います。

神保氏:以前の面接試験では、事前に出願書類や面接資料が入っている封筒を用意し、面接室に案内する際に誘導員が受験生に封筒を手渡しするという運用をしていました。前身のワークフローシステムでは受験生の写真データは表示されず、目の前に来た受験生の受験番号で本人確認をしており、どちらの場合も本人確認をするだけで時間を要していました。iiscore-Uでは、受験生の顔写真が教員の画面上に出てくるので、目の前にいる受験生の顔と照合して先に進むことができます。

大矢氏:集団面接では4~5人一緒に本人確認をするので、その場にいる受験生全員の顔写真が画面上に並ぶように設計していただきました。面接時間は限られていますので、本人確認の時間が少なくなった分、本質的なところをしっかりと聞くことができるようになりました。

--想定外のメリットがありましたら教えてください。

大矢氏:紙の運用では、どうしても合計点でしか面接評価を追いかけることができませんでした。iiscore-Uでは、面接した内容ごとの素点がわかるので、どこが良かったのか、悪かったのかがすぐにわかります。面接評価の透明性が確保できるだけでなく、面接官や学部側もデータを追いかけて総合的に振り返ることができます。今年の入学者はどのような能力が高くて、どのような部分が苦手なのかがわかるので、入学後のケアについても発展的に考えることができます。また、紙の資料を使用しない副産物として、オンラインでの判定会議も可能となりました。

 我々は日頃から事前に受験者本人から個人情報の第三者提供の許諾を得ることを条件に、受験後に高校の進路指導の先生を訪問して受験者ひとりひとりについてお話する機会を設けていますが、このiiscore-Uのおかげでその内容も深くなりました。本学苑の教育方針でもある「人格接触による手塩にかける教育」のとおり、きめ細やかな情報提供を行うことで受験生のフォローアップに役立てられたことは想定外のメリットと言えると思います。

--ありがとうございました。

 大矢氏が「ODKさんが我々の業務や面接の進め方などの知見をお持ちだったことも、このiiscore-Uの開発と導入には大きかった」と振り返るように、DXを進めるうえでは入試業務のセンシティブな部分を信頼して共有できるパートナーの存在が欠かせない。今後はさらに面接の質の向上やデータ分析による入学後のサポートなどの新たな展望も期待される。大学の入試担当者の方には、ぜひこの事例を参考にしていただければと感じた。

ODKソリューションズ

《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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