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【相談対応Q&A】事故を防ぐ努力をしてほしい

 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第174回のテーマは「事故を防ぐ努力をしてほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第174回のテーマは「事故を防ぐ努力をしてほしい」。

 多くの学校・園で新年度が始まっています。親も子供も色々な期待を持って臨む新年度です。その子供に合った学びや育ちができることが望ましいです。そういった学びや育ちの前提となることが「学校・園が安全であること」です。いくら良い学びや育ちができたとしても、日常的に怪我をしてしまったり、最悪の場合、死亡事故が起こってしまうような環境は望ましい環境ということはできないでしょう。今回、そういったテーマに関して「デジタル機器の活用」と「異動してきた人の気付きを大切にする」を話題にしたいと思います。

学校・園の事故を防ぐためには?

 学校・園における事故の発生について調べると、子供の年齢によって事故の内容に違いがあります。保育所においては、午睡時の窒息など、幼稚園においては、送迎バスの閉じ込めなど、小中高においては、通学時の交通事故などが代表的な事故として挙げられます。どれも死亡事故につながることもあるようなものです。こういった死亡につながるような大きな事故から廊下で出会い頭にぶつかる、廊下が濡れていて転倒するなどの少し軽い事故までさまざまな事故が学校や園では起こっています。

デジタル機器の活用

 そういったさまざまな事故を防ぐために組織として取り組んでいくことは必須なことです。一般的に、その学校・園で起こりやすい事故などについて、子供に注意喚起をしていくことなどが行われます。そういったことをしていくと共に新しい技術を活用していくというやり方があります。先ほど例に挙げた保育所における午睡時の窒息、幼稚園の送迎バスへの閉じ込めに関しては、現在の技術を活用した事故防止のシステムが開発されています。窒息に関しては、子供にセンサーの付いた小さな機器を付けておき、不適切な状況になるとアラームで通報されるというものです。送迎バスに関しては、バスの一番後ろにボタンがあり、最後に確認をしてそのボタンを押さないとアラームが鳴る仕組みや、それぞれの子供の名札にICチップが内蔵されており、園に入る際にデジタルで確認ができる仕組みなどです。

 デジタル機器を事故防止に活用していく具体例となります。そういった機器は万全ではありませんが、事故の可能性を減らすことにつながります。教育・保育の職場は多くの場所で十分な人員が確保できておらず、人手が足りない中で日々の活動に取り組んでいます。そういった状況において、上で挙げたような新しいデジタル機器を有効に活用していくことは事故のリスクを減らすという意味で良いのではないかと私は考えています。

異動してきた人の気付きを大切にする

 また、これまで書いたものとは少し違った視点では「変化から気づくことを大切にする」ということがあります。教員にとって「異動は最大に研修」と言われることがあります。学校や園が変わることで学ぶことが多いということです。私自身、神奈川県横浜市の小学校から埼玉県深谷市の小学校に移りました。都道府県をまたいだ異動だったので、さまざまな違いがあり驚いたのを覚えています。また、その後、公立小学校から短大・大学へ移りました。私立の短大・大学だったこともあり、さらに多くの違いに驚きました。

 事故防止に関しても同様なのだと思います。その学校・園に長くいる人はその環境を当たり前に感じてしまいます。新しく移ってきた人は長くいる人とは違う目で見ることができます。その学校・園の危険個所などに気付く可能性も高いです。そういった気付きを表出できるような環境を作っていくことが望ましいです。「この学校・園のやり方があるから新しい人はしばらくは黙ってようすを見ていてください」のようなやり方では、新しい気付きなどは表出されることなく、終わってしまいます。何らかの気付きがあったとしても新しい環境に少しずつ慣れ、それが当たり前になってしまうのだと思います。管理的立場にある人はそれぞれの組織において、新たに異動してきた人に対して、気付きがあったら積極的に伝えてほしいということを伝えていくことが大切でしょう。子供を取り巻く不幸な事故がなくなっていくことを願います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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