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新型コロナ、23か国で学校閉鎖続く…ユニセフ

 ユニセフは2022年3月30日、「子供たちは本当に学んでいるの?」と題した報告書を発表。新型コロナウイルス感染症の影響で学校が完全に開いていない国は23か国あり、学齢期の子供約4億500万人が、中途退学する危険性があるという。

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ティグライ州のユニセフが支援する学校で黒板に向かう女の子(エチオピア、2021年10月撮影)  (c) UNICEF_UN
  • ティグライ州のユニセフが支援する学校で黒板に向かう女の子(エチオピア、2021年10月撮影)  (c) UNICEF_UN
  • ラオカイ省に住む15歳のドゥオンさんと13歳のタインさん兄弟(ベトナム、2021年12月撮影) (c) UNICEF_
  • 空っぽの教室に1人たたずむ11歳のアマトゥンさん(ウガンダ、2021年9月撮影) (c) UNICEF_UN0535362_Abdul
 ユニセフは2022年3月30日、「子供たちは本当に学んでいるの?」と題した報告書を発表。新型コロナウイルス感染症の影響で学校が完全に開いていない国は23か国あり、学齢期の子供約4億500万人が、中途退学する危険性があるという。

 報告書「子供たちは本当に学んでいるの?」では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにともなう学校閉鎖が子供たちに与えた影響に関する国別データと、パンデミック以前の子供たちの学習状況に関する最新の分析を掲載。1億4,700万人の子供たちが、過去2年間で対面授業を半分以上受けられなかったことが指摘されている。これは、世界全体で2兆時間もの対面授業の機会が失われたことになる。

 また、報告書では、学習損失に関するデータに加え、学校が再開した後も多くの子供たちが学校に戻らなかったことを示す証拠を指摘している。リベリアでは、2020年12月の学校再開時に公立学校の生徒の43%が戻らず、南アフリカでは2020年3月から2021年7月にかけ、学校に通っていない子供の数が25万人から75万人へと3倍に増えた。また、ウガンダでは学校が2年間閉鎖された後の2022年1月には、約10人に1人の生徒が学校に戻らず、マラウイでは中等教育における女子の退学率が2020年から2021年にかけて、6.4%から9.5%へ48%も増加した。ケニアでも、10~19歳の若者4,000人を対象にした調査で、学校再開時に女子16%、男子8%が学校に戻らなかったことがわかったという。

 学校に通っていない子供たちは、社会的にも厳しい状況に置かれている。読み書きや基本的な計算ができない可能性が高く、学校が提供するセーフティネットから切り離されているため、搾取や生涯にわたる貧困のリスクも高まる。

 報告書ではまた、学校に通っていない子供たちが大きな損失を被っている一方で、32の国と地域では、パンデミック以前から学習レベルが非常に低く、パンデミックによる学習損失が状況をさらに悪化させている可能性が高いことを強調している。分析の対象となった国々では、現在の学習ペースは非常に遅く、学齢期の子供たちのほとんどが2年で習得できるはずの基礎的な読解力を習得するのに7年、基礎的な計算力を習得するのに11年かかると言われているという。しかも、多くの場合において、子供たちが基礎的な内容を習得したという保証はまったくない。

 ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセル氏は、これらの状況から「もっとも疎外された子供たちは、パンデミック以前から取り残されていました。パンデミックが3年目に突入した今、私たちは『普通』に戻るわけにはいきません。子供たちを教室に呼び戻し、学習状況を評価し、遅れを取り戻すために必要な集中的な支援を行い、教師が必要な訓練と学習資源を確保することが必要なのです。これらを行動にうつさないことは、あまりにも高いリスクをともないます」と述べた。
《木村 薫》

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