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【相談対応Q&A】親の職業を話題にしないでほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第100回のテーマは「親の職業を話題にしないでほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第100回のテーマは「親の職業を話題にしないでほしい」。

きちんとした配慮を

 学校の授業では、親をテーマにしたものに取り組むことがあります。小学校の生活科や総合的な学習においてです。親の仕事に関することや親への感謝等の内容です。また、キャリア教育の取組みでも、同様の取組みをすることがあります。そういった取組みは決して悪いものではないのですが、きちんとした配慮をしたうえで実施をしないとさまざまなトラブルを発生させる可能性があります。

 子供は将来、さまざまな仕事に就きます。学校において、職業理解に関する活動に取り組むことはとても意味があることですし、必要なことだと思います。現在、私は大学で教育学を教えています。大学生になる前の段階でしっかりと将来の職業について考え、進路選択することはとても大切だと小学校の教員の時よりも感じています。

 子供にとって、自分の親は身近な存在であり、親が関わっている仕事についても馴染みがある場合が多いです。そういった経緯で自分の親の仕事をテーマとした活動に取り組むことがあります。ただ、身近であるからという理由で親の職業等を扱うことには難しさが伴います。職業に貴賎はありませんが、できれば職業を詳しく子供に伝えたくないと思っている親もいるはずです。機密保持等の理由で話すことができない場合もあります。そういったことを考えると職業に関する活動に取り組むにあたっては自分の親ではない形の方がスムーズに取り組むことができるのではないかと私は感じています。

 また、今回のテーマである「親の職業」と似たもので、「親への感謝」というテーマもとてもデリケートなものです。現在の日本では離婚をするカップルも少なくありません。統計によると3組に1組は離婚に至るとされています。そういった現状をふまえると「父の日」「母の日」等に向けての取組みを学校や幼稚園・保育園ですることは避けた方が良いだろうと思います。クラスの子供が一人親世帯である可能性もあります。名簿上で父母ともにいる形でも血がつながらず、良い関係でないというケースもあります。さらに親が「感謝するような存在ではない」という家庭もあります。虐待をしているケース等がそれに当たります。

デリケートなテーマは扱いが難しい

 先にあげたように親に関する活動に取り組むには難しさを伴います。小学校4年生で「1/2成人式」で取り組む学校があります。以前は20歳が成人年齢だったので、その半分である10歳の時に、これまでの育ち、そしてこれからの育ちについて考えていこうという取組みです。その趣旨は良いものだと思いますが、その中で取り組まれる「親への感謝」というものには私は反対の立場です。親への感謝の手紙等を渡すこと等は良い面もあるのですが、悪い面もあるのだと思います。理由は先ほども書いたように、すべての子供のそばに親がいる訳でないすべての子供が自分の親を感謝したいと思っている訳ではない可能性があるということからです。

 こういったデリケートなテーマについては現在の日本の学校においては取り組んでいくべきではないのではと私は思っています。大多数の子供にとって良いことであったとしても、一部の子供にとってマイナス(悲しい、苦しい等)な思いを抱かせてしまうようであれば、すべきではないでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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