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【相談対応Q&A】旅行の土産を配らないでほしい

クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第97回のテーマは「旅行のお土産を配っているので止めさせてほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第97回のテーマは「旅行のお土産を配っているので止めさせてほしい」。

人間関係がこじれる原因に

 学校において子供の人間関係がこじれる原因の1つに「貸し借り」があります。実際にものの貸し借り、たとえば、鉛筆や消しゴム等の文房具、ゲームのカセット等の遊び道具の貸し借りにおいてトラブル等が起こり得ます。借りたものを紛失してしまったり、破損させてしまったりということです。鉛筆の場合、金額は数十円です。金額としては大きくないのですが、紛失したり、破損させたりしてしまうと、気持ちのわだかまりができてしまうこともあります。

 そういった実際のものの貸し借りだけでなく、精神的な面での貸し借りもあります。そういったものの1つが「プレゼント」です。今回のテーマである「旅行のお土産」の他、「誕生日プレゼント」や「バレンタインのチョコレート」等があります。

 そういったプレゼントは、大人の世界では普通にあるものです。特にバレンタインは、お店やマスコミも販売促進を狙って、盛り上げています。そういったものはコミュニケーションを滑らかにするものでもあります。お土産やチョコレートの1つがきっかけで、良い人間関係となることもあります。

 ただし、子供の場合は大人とは少し状況が違ってきます。お土産やプレゼントを「あげた」「もらった」ということが人間関係のわだかまりを作ってしまう危険性が大人よりも大きくなります。上下関係の意識ができてしまったり、仲間意識が変な形で作られてしまったりというケースです。

 こういったトラブルは男子よりも女子の方が多いようです。女子は男子と比べ、人間関係が一定のメンバーで密になりやすいです。密になりやすい分、トラブルに発展すると、問題が大きくなりがちです。年齢としては、小学校の中学年、高学年、中学生あたりです。

学校のルールとして明文化する

 今回のテーマである「旅行のお土産」「誕生日プレゼント」「バレンタインのチョコレート」等に関しては、学校として「禁止」というルールにすることが一番わかりやすいです。4月に子供や保護者に配る「学校のルール」等に、そういったことを記述しておくことが良いでしょう。文章になったものを全校児童・生徒に配布することで、学校として揃った取組みとすることができます。

 学校におけるさまざまな指導において難しいものが教員による指導の差が出てしまう状況です。「あの先生(クラス)は、大丈夫なのに…」と子供が言うような状況です。こういった状況は、禁止にしている教員にとっても許可している(禁止としていない)教員にとっても両方にとって不幸です。もちろんそういったものの間に挟まっている子供が一番不幸です。

 私は何でも学校で共通した形で取り組むことが良いとは思いません。教員(学級)による裁量があった方が良いと思います。ただ今回のテーマのようなものは、明文化することで教師と子供との関わりにおいてブレが生じにくくなります。注意すべきことは、あれこれとたくさん規則を作ってしまうことです。一般社会では受け入れられない校則をたくさん作り、それをずっと適用し続けている学校もあります。こういった悪い例を意識しながら、子供が戸惑うことなく過ごすためのルールを示していくことが望まれます。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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