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【クレーム対応Q&A】クラス全員の前で叱られた

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第21回は「クラス全員の前で叱られた。会社だったらパワハラではないか」。

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 学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第21回は「クラス全員の前で叱られた。会社だったらパワハラではないか」。

教師はパワハラ的な指導をしてしまう可能性がある


 教師はいくら指導力の高い人でもパワハラ的な指導をしてしまう可能性があります。文科省は、教師に「懲戒権がある」ことを認めています。「懲戒権」とは、学校教育法第11条に規定されているもので、肉体的苦痛を伴わない範囲で「授業中に教室内に起立させる」「放課後等に教室に残留させる」「学習課題や清掃活動を課す」「立ち歩きの多い児童生徒を叱って席につかせる」などを教師が子どもにさせることです。そのことによって教育的な効果があるとされる場合に限ってのことです。

 このような懲戒に関して、教師は常に配慮が必要となります。教師は子どもとの関わりの中で、行き過ぎた指導を行ってしまうことがあります。私自身、どちらかというと教室などでは感情が乱れないタイプの教員でした。大声を出すようなこともほとんどなかったです。それでも、色々な条件(寝不足、仕事が立て込んでいる、子どもが同じような失敗を繰り返すなど)が重なってしまうと、感情が乱れ、大きな声を出すようなことをしてしまうこともありました。大いに反省しています。

 厳しい指導(パワハラ的指導)について、ドイツの精神科医のアリス・ミラーが詳しく研究をしています。彼は教師がパワハラ的な指導をすることを「ダークペタゴジー(闇の教授法)」と呼んでいます。教育心理学での「恐怖の条件付け」だとし、脳の恐怖中枢を刺激するのだとしています。

 学校の教室はダークペタゴジーが行われやすい条件が揃っているそうです。それは「密室的環境」と「他者をコントロールする必要性」です。学校以外でも似た環境があり、監獄、捕虜収容所などがそれに当たります。学校においては、「小学校の学級」と「中学校の部活」がそれに当たります。

教師が配慮すべきことは…


 先ほどから書いているようなパワハラ的指導について、教師はどのようなことに配慮すると良いのかについて考えます。まずすべきことは、子ども、保護者、周りの教員からの意見に敏感になることでしょう。大きなトラブルが起こる前には多くの場合、小さなトラブルなどが発生しています。今回の厳しい指導などに関するもので、大きなトラブルとは「教師の厳しい指導によって子どもが自殺をしてしまう」というようなものがあります。そういった大きなトラブルの前には何らかのアクションがあります。たとえば、「親からクレームが入る」などです。さらにその前の段階もあります。「子どもが小さな不満を訴えてくる」などです。

 こういったものと関連して安全管理などの観点から「ハインリッヒの法則」というものがあります。重大な事故が1件発生する際には、軽症を伴う災害が29件起きており、ヒヤリとする事件が300件あるというものです。教師が行うさまざまな行為に関し、周りの人からのさまざまな反応があります。肯定的な反応、否定的な反応などがあります。そういった際、どうしても自分に都合良く解釈し、自分にとって肯定的な反応を重視してしまうことがあります。そういったことが大きなトラブルにつながる可能性を高めてしまいます。

 今回話題にした「パワハラ的な指導」だけではないのですが、周りの人の反応、特に否定的な小さな反応を大切にすることが大きなトラブルを予防することにつながります。そういった意識を持ちながら日々の指導にあたりたいです。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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